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ハイエクを騙る

久々に小難しい話

 またちょっとだけ言及の話から。チキン野郎なのでエア言及です。最近のはてなブログでは冬眠前の修羅に襲われる事案があるって噂だし、過疎ブログだからって油断してはいけないgkbr。

「修羅」とはどうも言及が好きなようで、まあ「プロレス」でも何でもエンタメとしておもしろく記事に出来れてばいいとは思うんですけど。そういう記事好きです。……私自身もいわゆるはてなの「修羅」なんじゃないのって話でもあるかもですが。


 でね、先月からシロクマ先生が「はてなダイアリー」から「はてなブログ」の方にいらして、読む機会が増えました。言及記事が多い。言及された人「騙ってる」とか「間違ってる」とかバッサリ、そんなにツッコむでもなく自説を展開。対して相手方の応戦は「名誉毀損だ」「強者の論理だ」との趣旨、議論の本筋では勝負できずそっちに行ってしまった感。

 横綱相撲。盤石の寄り切り。強すぎ。ご本人もちょっとやり過ぎと感じたか、反省の弁、のようなエントリもありました。あんだけ強いと論陣の張り方も調整が難しそう。手加減しろって話じゃあないですけど「王様はハダカなんじゃないの?」と言うだけでなく、場合によっては服を着せてやる手順も考えてやらねばならないのだろうか。え、そこまでやるの?ってのもあるし……難しい。

なんのこっちゃ?と気になる方はすみません、「シロクマの屑龍」っていうブログです。探してみてください。当事者さん達をここへ呼び出すのもヘンなので。


 このバッサリされた記事、私の見たところでも説得力ない、ヘンだ、と思いました。で、実は私もなんかちょっと書いたのです。承認欲求やらサブカルやら。しかしどちらも世に公表できる水準にない、のでボツになりましたチキン野郎。


でも、齋藤さんのハイエク論とフランス革命の話が気になって仕方がない。
ハイエク支持とフランス革命礼賛は両立するの?っていうところ。

でもでも、ハイエクをメインで話をしてしまうと、本筋である「承認欲求」ネタからは脱線するし、些末で余計なツッコミのような気もする。それに私、ハイエクのことはそんなに知ってる訳じゃない。他ブログと論陣を張り合えるレベルにない。


なので一人で勝手にやってみます。

ハイエクを騙る

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Friedrich August von Hayek (1899~1992)


ハイエクは時折うちでも名前が出てきます。一番最初はこれ。
ブログ始めて1月目にさっそく出てきて、タイトルにもなってる。


fnoithunder.hatenablog.com


 大したこと書いてないね。っていうか、今さら読み直したらその稚拙な書きっぷりにびっくり。消したい衝動にかられてしまった、というのは置いといて。この記事と非常に近い時期に齋藤さんもハイエクの「隷従への道」を紹介する記事を書いていたんです。もう残っていませんけど。

バークとハイエク

 ハイエクってエドマンド・バークを高く評価しているのです。バークと言ったら18世紀のイギリスの政治家、保守主義の元祖です。フランス革命の初期段階で著書「フランス革命省察」を発表、革命派をボロクソに叩いてた人。改革派(グレートリセッター)からするとまさに「小チンピラ三流バカ政治家」の見本で、橋下さんに正されるべき京都の某大学教授のような存在。バークのことはうちの読者さんはご存じですね。


新訳 フランス革命の省察―「保守主義の父」かく語りき

新訳 フランス革命の省察―「保守主義の父」かく語りき


 なので、ハイエクフランス革命、両方の支持が成り立つのはなぜだろう、って疑問を持った訳です。しかしハイエクの思想って、なんせ難しい!って大評判なのでつい敬遠してしまってまだ読んでいません。断片的な解説やネットで調べたりした限りでの私の解釈は以下の通り。

ハイエク斜め読み

 エクルズのニューディールケインズの一般理論を徹底批判、設計主義の否定、マルクス資本論の完全論破とか。こういった計画経済統制経済ナチスドイツのような全体主義を呼び起こす元凶である。人の生きる規範とは「計画」ではなく「歴史や伝統」である、と言っている。いわゆる「ゲマインシャフト」を重んずるような論説。古き英国のホイッグ党支持で、バークの思想に近いとも言われる(バークはホイッグ党の人です)。それゆえ現代における「保守主義」の代表のようにも言われ、実際にバークと横並びで「保守主義者」と紹介するブログもネットでは散見される。


 というわけで、歴史や伝統に縛り付けられた人々を解放する、そんなものは破壊してやる!という徹底した進歩主義フランス革命とは真逆の思想の持ち主と思っていた。
(齋藤さんてその生い立ちから、いわゆる「ゲマインシャフト」的なものを嫌っているようにも伺えるので、フランス革命礼賛というのは分かる気もするのですけど)


 気になるのは「全体主義」の起源で、これ王道系の思想家は、プラトンの時代からずっと、バークもトクヴィルオルテガアーレントも一貫して「全体主義は民主主義から生まれてくるし、民主主義からしか生まれない」との見解。ここが違う気がするがまだよく分からない。

ハイエクは保守なのか

 ハイエク本人は「俺は保守じゃねえ!」と断固否定、大いに保守派を嫌っている。ので、進歩主義的な側面もあるのだろうか。

 中野剛志さんの論説によれば、ハイエクは「設計主義の徹底排除」という徹底した「設計主義」に陥っている自己矛盾、との批判。自由革命と産業革命の進展・完成により「ゲマインシャフト」は既に規範としては死に体、ハイエクの言うような自然国家規範は現代ではもう成り立たっていない。いわゆる現代のような「消極的自由主義*1では、バラバラにされた個人のルサンチマンを利用して扇動する者が出現し、全体主義のリスクが高まる。

 それゆえエクルズやケインズの提唱するような政策で国民統合を図り、Nation state(国民国家)を構築していく、という方向性が現代の「保守」であり、バークの教えの延長である。そんな感じかな。

バークとハイエクは全然違うよ、との主張。


 それに対してバークとハイエクを横並びで支持の人は保守を強調する。ただ私の印象では「保守」というよりも「アンチレフト」なんだよな。共産主義社会主義を敵視し撲滅を唱えるのがメイン。なので、そういう人に「バークとハイエクは違うんじゃないの?」と言うと「さては貴様共産主義者だな!」とレッテルを貼られてしまいます。中野剛志は共産主義者です。もちろん私も。二重行政リスクが分からん奴は共産主義者だ!!てな具合。


ネットで色々と調べてみると本当にハイエク論はバラバラ。
フランス革命と両立してる、とするサイトもある。例えばここ。


国民が知らない反日の実態 - ハイエクと自由主義


当然バークと両立しなくなる。でもアンチレフト。小難しくてまともに読んでない。

こっちはおもしろかったな。


「フリードマンは悪いけどハイエクは悪くない」という議論について | ASREAD


 なぜハイエクが難しいのかが分かった気がした。安倍政権ハイエクそのもの、安倍さんがサッチャー好きなのも納得。そして全く保守じゃないし、設計主義に陥ってるように見える。中野さんの論説を参考にしてる人かな。


 これ以上、私の現状の知識で書いてしまうときっと「ハイエクを騙る」になってしまうので、とにかく一旦「隷従への道」の解説書くらいは読んでおいた方がいいな。


ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)


池田ノビーさんか……おもしろそうではあるが客観性が怪しい気がする。ハイエクを知るための一冊目としてはイマイチか。


自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す (PHP新書 492)

自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す (PHP新書 492)


「隷従への道」の丁寧な解説本との評判。こっちがよさげな感じ。
まずこれから読むことにした。

今日は一五章のうち一章だけ読んだところ。正直、えー……って感じ……
取り敢えずは割と単純なアンチレフトに見えてしまう。


 この本は2008年に出版されているんですけど、これ今の時代だと色々と問題が大噴出していて収拾がつかない案件多発してるんですが全く無視されてる。佐伯啓思氏は20世紀のうちにリーマンショック的なものを予見してたし、なんか2周遅れな感じ。今更そんなんでええんかい!と突っ込まざるを得ない。まあ「隷従への道」自体は1944年の本ですから、1950~70年であったら「なんと先進的な!」という評価になることも理解できるのですが。

今の経済を立て直そうってんならお話にならない気がする。まあそもそも「国家」として経済を「立て直そう」って考え方がおこがましい、ってのがハイエクの思想なのね。たかが国家のクセに。余計なことすんじゃねえよっていう。そういうのが根本にある。



私としては、例えば、この対談の方が示唆に富んでいて刺激的で面白かったな。


国家のツジツマ 新たな日本への筋立て(DVD付きデラックス版) (VNC新書)

国家のツジツマ 新たな日本への筋立て(DVD付きデラックス版) (VNC新書)


3周くらい進んでると思う。
なんて思うのはきっと私が共産主義者だからなんでしょう。自由至上主義者からすると。


 どうなんだろう。ハイエクの「隷従への道」は、アダム・スミス、エドマンド・バーク、アレクシ・ド・トクヴィルのような、数百年に渡って読まれる名著、古典になり得るのだろうか。


取り敢えずはちゃんと読んでみるよ。


※ 以前私が絶賛していたこの本とは殆ど真逆だと思います。

*1:「消極的自由主義」とは何か、については、いずれやりたいと思います