マネタリーベースとマネーサプライを区別して下さい

 前回の続き。例の増田日記*1、非常に良質なテキストです。とても解りやすくリフレ解説されています。未読の方は必ず読んでね!
 
まずは基礎を押さえよう!ということで。
前回の話も解りやすかったですよね!(独りよがり)
 日銀はインフレ恐怖症だったのか? - 強靱化のすすめ


以下、また増田記事から抜粋。
通貨量と ①デフレ ②為替 の関係の話です。

中央銀行(日本だと日本銀行)が供給している通貨の総量をマネタリーベースと言います。

リーマンショック以降、アメリカは大規模な金融緩和によってマネタリーベースが急増しました。

それに対して日本はあまり増えていません。不況下でも出回るお金の量を増やさなかったことでデフレ不況が加速していきました。
ドルはたくさん出回っているから安くなり円はあまり出回ってないから高くなります。
ここで大事なのは、通貨の交換レートというのは出回っている量の比率で決まるものでしかないということです。


これもダウトだなあ。為替レートは「出回るお金の量」で決まるの?
具体的に、誰が?どこに?どうやって?出回らせているの?
中央銀行ではありませんよね。

マネーサプライはどうやって増えるの?

 まず用語がおかしい。中央銀行が供給するお金は「マネタリーベース」ですが、市中に「出回るお金」は「マネタリーベース」ではありません。「マネーサプライ」です。これは以前にパチンコ屋のたとえ話をしました。


現実逃避 - 強靱化のすすめ


 パチンコ屋が保有している玉が「マネタリーベース」、台の中で実際に回り回っているのが「マネーサプライ」です。どんだけ店のパチンコ玉(マネタリーベース)を増やしたって、パチンコで遊びたい人が増えないと、出回る玉(マネーサプライ)は増えませんよね。

じゃあ、具体的にどうやってマネーサプライは増えるの?

例:

西暦2015年。c氏のタンスには一千万円のお金が貯まっていました。ただ持っていてもつまらないな、と思い長期国債を購入しました。これでc氏のお金は国に貸し出されます。公共事業に充てられ、道路になったり、土建労働者の給料になったりしてこの1000万円が使われます。

 でもc氏、やっぱりお金を使いたくなりました。家が古くなったので一千万円で建て替えたい。で、この国債を銀行に持っていくと、これを担保にお金を貸してくれます。仮にc氏が失業したりしても、国債を売却すれば貸金の回収は可能ですからね。

c氏は銀行から1000万円借りて、家を建て替えました。

というわけで、c氏のお金1000万円を元手に、新しい「道路」と「家」ができました。合わせて2000万円分の「固定資本」が形成されました。


 そもそもc氏が持っていたお金は1000万円だったのに、それを元手に2000万円が使われていますね。市中に出回るお金はこうやって増えます。これを「信用創造」と言います。こうやって「マネーサプライ」が増えます。つまり、
 
誰かが借金をしてお金を使うと「マネーサプライ」が増える。
つまり国とc氏が「マネーサプライ」を増やしている。


 さて、この例では流通する通貨量が2倍になりました。こういう具合に通貨量が2倍になったら、じゃあ200%のインフレで、通貨価値は半分になっちゃうの?というと全くそんなことはありません。こういう2000万円の「マネーサプライ」の反対側には2000万円の「固定資本」が形成されています。ので、
通貨量が倍増したってインフレ率は0%です。

じゃあどうやってインフレが起こるの?

 このようなかたち、つまり実体を伴ったかたちで「マネーサプライ」が増えていくと、仕事の量が増えていきます。すると人手不足や資材不足などが起こるようになります。人手や物の不足。つまり需要の逼迫です。これがインフレ要因です。不足の程度は人々の需要、或いは欲望次第なので、インフレ率がどうなるかは解りません。インフレとは需要サイドから起こるものです。これが実体経済の側から導き出されたケインズ的な考え方です。

 為替についても同様。出回るお金の量「マネーサプライ」が2倍になっても、為替は全く変動しません。じゃあどうやって変わるの?

為替はどうやって変動するの?

 c氏が家ではなく1000万円のドイツ製高級自動車を買った場合。通貨の動きとしては、円を売ってユーロを買い、そのユーロで自動車を購入し、日本へ輸入、となります。もちろんc氏本人が手続きするわけではありませんけど、こういう流れです。このように円を売り外貨を買う、ことにより通貨レートが変動します。この場合は円売りユーロ買いなので、円安ユーロ高になります。
 
 日本からお金は出ていきましたが、外国から自動車という耐久消費財が入ってきました。ので別に日本の「富」が流出したわけではありません。特に問題は無い、と言っていいでしょう。

まとめと次回予告

 今の日本の通貨安がこの通りの理由なら、ちきりん師匠の例のツイートは確かにヘンです。増田さんが正しい。しかし実のところ、通貨安の理由は別の所にあります。ので、私はちきりん師匠よりも増田さんの方がヘンだと思います。師匠のツイートには一理あります。


いったい誰が円を売り外貨を買っているのでしょう?ちきりん?


これは次回までの宿題ということで。
ぜひ皆さんも考えてみてください!


SONJA-NE !


(続きを書きました)fnoithunder.hatenablog.com


こちら、中野師匠の参考記事です。

(有料ですが、私の話より解りやすいし正確です)

岩田規久男先生の理論を徹底的に批判する! -なぜ、金融政策はデフレを止められなかったのか:ちょく論ー識者による寄稿マガジンー:ちょく論(ちょく論) - ニコニコチャンネル:社会・言論
 

*1:増田とは、はてな村用語です。はてな村にはアノニマスダイアリー(匿名日記)記事というコンテンツがあります。なぜか真ん中を取って「マスダ」と呼ばれます。