中野剛志と橋下維新

 坂本晶さんのところで、弊ブログでもおなじみの藤井聡さんと中野剛志さんの話が出てきました。とても面白い考察ですので、是非ご覧下さい。


sakamotoakirax.hatenablog.com


 藤井さんと中野さんは、3年ほど前には一緒に仕事をしていたこともあり、仲がいいようです。そしてその当時、両者とも橋下さんに「税金で喰ってる既得権者、三流バカ学者、バカ官僚」という具合にdisられたことがあります。これ、藤井さんは随分と腹を立てていましたが、中野さんの方は大したリアクションもなく、ギャグのネタに使ったりして遊んでいました。


 その中野さん、今回の大阪都構想騒動をどう見ていたのでしょうか。しかし残念ながら、最近はお仕事が忙しかったのか、全く出てきませんでした。


なので、私が勝手に中野さんを代行し、中野さんの所見を(妄想で)述べてみましょう。ええ、だいたい分かっているつもりです。(大丈夫なのか……?)


(以下、今回は敬称略です)

妄想崛起

 「都構想だあ?グレートリセットで4000億円/年の経済効果だと?バカも休み休み言え。中二病をこじらせたのか。百歩譲っても、そんなくだらない誇大妄想が許されるのは、せいぜい十代までだぞ。お前いったいいくつになったんだ?っていうかまだ生きてたのかよ。こりゃもう情状酌量の余地無しだな」


「対案を出せって?ええ、ちゃんとありますよ。とっておきのが。『とっとと中二病から卒業して下さい』以上!」


 これが中野剛志の大阪都構想に対する見解である。これまで「維新」の政策論などまともに語ったことがない。興味もないし、話にならん、の一点張り。藤井と違い、橋下が何を言ってもスルーを決め込み、たまにメディアに出てくると、呆れかえった調子で、上記のような小馬鹿にしたような発言をする。
 
 橋下は中野を「世間知らずの穀潰しバカ官僚、究極のプータロー」とか言っていたが、これについても中野は、特段腹を立てる様子もなく、むしろ橋下のおかげでギャグの持ちネタが増えた、と喜んでいるようなフシさえあった。
 
 では中野は、維新も橋下も全くどうでもいいと思っていたのかというと、決してそんなことはない。実のところ「維新」に対しては、心底呆れかえり、非常に苛ついていたのである。でも、その相手は橋下徹ではなかった。


 じゃあ一体、誰に対して苛ついていたのか、といえば、堺屋太一、古賀茂明、岸博幸江田憲司に対してである。彼らは全員「維新」の政策ブレーン、或いは議員である。そして全員が中野の先輩にあたる、経済産業省(旧通商産業省)出身者である。


 「俺が世間知らずのバカ官僚だって?アンタ自分が何言ってるのか分かってんのか?俺がバカ官僚なら、あんたの周りにいる奴らは何だ。そいつら全員、世間知らずバカ官僚のなれの果てだぞ。そのバカどもに、くだらないことを吹き込まれ、いいように操られているのがアンタなんだよ」


そんな感覚だから、橋下に何か言われても、あまり腹も立たないのである。

 「三流バカ学者ってあんたが敬愛する竹中先生のこと?」とか「霞ヶ関のバカ官僚ってお宅の古賀&岸のことでしょ?話しが合うねえ橋下さん」なんて思ってしまって、腹が立つよりもむしろ可笑しくなってしまうのだ。

しかし彼は藤井ほど優しくないのでスルーしている。



(こんなん書くと、なんかすげー性格悪いやっちゃなー、とか思いますかね?)



 こう言っちゃあ、なんなんだが、この人はまあなんつーか、所詮は官僚、木っ端役人。出世する気もないらしく、いつも好き勝手なことを言っている。


 彼が憂慮し、けしからん、と考えているのは、政治家ではなく官僚の方である。身の程をわきまえず、中二病を抱えたまま五十歳を過ぎ、国政に打って出て「改革」を訴えたり。或いは肩たたきにあって省庁を退職後TVコメンテーターに転身し、古巣の悪口ばかりを連呼する。官僚が悪なのだ、これからは政治主導なのだ、と声高に叫ぶ。そういう輩。


政治家も官僚も「行政官」ではあるが、身分も役割も本来は違うものである。


 政治家には様々な制約がある。党の方針には無闇に逆らえないし、民意にも逆らえない。落選すれば失業し、アイデンティティを失う。政局も重要だ。例えば大阪都構想では、自民党は反対だったが、安倍首相と菅官房長官は態度を保留し、どちらかと言えば橋下にエールを送っていた。

 これは決して都構想に賛成だから、ではない。大阪のことなど考えていない。将来的に安倍の目論む「憲法改正」に橋下が使える、という可能性があったからだ。橋下を敵に回すのはまずい、という一点のみで、大阪府自民党を裏切るようなことをした。

 あまり褒められた態度ではないが、私は彼らを責める気にはなれない。仕方がないか、と思ってしまう。大阪都構想など政治家にとっては政局のひとつでしかない。


 民意、選挙、政局、党方針、謀略。政治家の身分とは非常に不安定なものだ。発言も行動も常に慎重さと大胆さのバランス、計算が求められる。

 それに対して官僚の身分は非常に安定している。政治家と違い、政局も民意も関係ないし、選挙もない。自由度は非常に高い。


 だからこそ官僚とは本来、黒子に徹しなければならない。決して出しゃばってはいけない。政局をにらんだような発言はしない。民意に阿るような発言もしない。それをやっては絶対にいけない。歴史、論文、古典を分析し、正しいもの、ベストなものを探し出して国家の行く末をサポートする。それが官僚たる者の務めである。


 それが中野の考える「官僚道」である。だから彼は、官僚の道から外れた元官僚が大嫌いである。つまり堺屋であり古賀であり岸であり江田である。彼らは政治家に取り入り、大衆に阿り、「ぼくがかんがえたさいきょうのかいかく」を掲げで日本を弄ろうとする。それがどうにも許せない。


お前らいい加減にしろ。身の程をわきまえろ。
日本をこんな奴らの好きにさせてはいけないのである。
 
 

官僚の反逆 (幻冬舎新書)

官僚の反逆 (幻冬舎新書)