自由の条件
メロンの人が何か面白い話&動画紹介していたので、「後で検討する」とコメントしてしまったのだが……ちょっと後悔している。
メロンさんはしいたけさんに言及し、自由主義についてパラダイムレベルの解説をしている。仰るとおり、これはリベラルvsネオリベラルの対立軸。こういうパラダイム議論について日本人は全般に「苦手・興味ない・意味が分からない」人が多く、無視ないし軽視し、議論がちっともかみ合わず平行線になる、ことがよくあるので、この手の議論に慣れておきましょう、という意味で有用なお話。
言及先のwattoさんは、リベラルサイドからのご意見。
柴田英里さんという人の「差別する自由はある」というツイートが議論の発端になっている。
自由主義の問題点について、シンプルで的を射た、とても重要な指摘をされている。
人権とか自由とか民主主義とかいうものは、例えば名誉革命やらフランス革命やらどこぞの独立戦争などの結果として獲得されてきたものであって、自然権としての自由なんて事実上存在したことなどない、というお話。
私も「そんな理念は現実的でない、空疎なおとぎ話だ」と思っているのですが、自由主義論者はこの「自然権」という「原理原則」を絶対視するので、どうにも議論が難しいのです。
具体的にパラダイムの名指しはされてはいませんが、パラダイムレベルの問題点をプラグマティックかつ的確に指摘し、具体的なポリシーレベルに落とし込んでいます。
対してsuganokeiさんの、リバタリアンサイドからのご意見。
仰るとおりで、くだんの対立ツイッター山崎氏は相手のパラダイムを理解する気がなく、頭ごなしに柴田さんを「寛容精神のない悪者だ」としてしまっているようです。このように、いきなり感情論をぶつけられても、パラダイムが異なるんだから議論がかみ合うはずもなく、これではロジカルで冷静な議論はできないよ、という、これまた非常に重要なご指摘。
この山崎氏はある意味「寛容警察化」してしまっていて、自身に寛容の精神がなくなっている、という自覚がなく、これでは遠からず悪魔化、魔女化してしまう恐れがある。そうなったら戦争への道しか残されていない。(自由主義の是非はともかく、自由主義における)寛容の精神という意味では、柴田さんの方が寛容です。まず、そういうパラダイムである、ことを(ある程度は)理解しておかないと平和で発展的な議論は望めません。
その上でsuganokeiさんは「自然権としての自由はある」という立場なので、ここはwattoさんの意見とは真っ向から対立する。確かに人権とは「全ての人間が生まれながらにして持っている」という設定、なので「自然権」としか言いようがないものです。理念上は絶対に自然権として存在しています。
いったんまとめます
① wattoさん:リベラルサイドからの意見
② suganokeiさん:リバタリアンサイドからの意見
③ メロンの人:両者の違い、立ち位置についての解説
既に有用な記事が出揃っておりますゆえ……
今さら私なんぞが出しゃばったところでねえ……
というわけで、有用なお話はここまで。
以下は保守主義者のぼやきです。
私自身はリベラルでもネオリベラルでもリバタリアンでもありませんので、いずれの考えにもあんまり賛同していませんが、特に現在猛威をふるっているネオリベラル・リバタリアニズムにどう対処していくか、について検討してみましょうか。まずは敵を知ることが重要。
私はしょっちゅう自由主義批判をしていますが、これは明確に「彼らの理念は社会を幸せにするものではないから。原理原則を守ることが全てであるから」です。ほぼネオリベに対する異議申し立てではあります。ただ、私自身はリベラルとネオリベラルは同源であってそこまで大きな違いのあるものだとは思っていません。リベラル=カトリック、ネオリベラル=プロテスタント。
この話はとても面倒なので、今は先送りします。
くだんのツイッター、柴田英里さんの話からやってみましょうか。
“思想信条の自由の範疇と認められない差別扇動”とは誰が定義するのでしょうか?そしてそこには恣意性が含まれるのではないでしょうか?私は、人間には差別をする自由もあると考えます。(続) https://t.co/JgsrREF92Nhttps://t.co/YGdFILemh1
— 柴田英里 (@erishibata) 2017年5月4日
芸術家だそうで、今回の件で初めて知ったのですが、ツイート追ってみると結構面白い。いかにも芸術家らしく、この人の論調は常にハイエクのそれです。典型的なハイエキアン。非常に強固で論理一貫したパラダイムに基づいているようなので、ポリシーレベルで議論してみても、かみ合わなそう、というか、らちがあかないというか勝ち目が無いというか説得不可能というか。
いわゆる原理主義者で、suganokeiさんの言うような、穏健な印象は受けませんでした。
……ここから先は本当にしょうももない話なので、次記事にします。
現代自由主義最大のイデオローグである、ハイエクの思想について批判します。
ここまでおつきあいくださった皆様ありがとうございました。超暇な人超やさしい人寛容な人は、次記事へお進み頂ければ幸い。