フリードマンの誤算

前回の続き。

ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 (PHP新書)

　もうリフレの話はいい加減にした方がいいかなあ。つまんないっすかね。なんか心配になっています。この本、そもそもは購読しているブログでオススメしていたので読んでみました。松尾匡氏がリフレ派とは全く知らず。
　
　前書きを読んだところでは随分と期待してしまったのですが。しかし本文の方、のっけからかなり話が雑なので……まあ、だいたい何となくは合っていると思うんですけど。以前に読んでいた、柴山桂太氏、水野和夫氏、佐伯啓思氏、神野直彦氏らに較べてしまうとね。なんかあまりにも雑過ぎる。私の好みの問題なのかな。ちきりんだって大人気なんだしね……
　
　途中で岩田規久男氏（日銀副総裁）を持ち上げていたので、ああ……そういう人なのか。この期に及んでまだそんなこと言ってるのか、と思ってしまいました。
　
　岩田さんは日本経済を日銀が完璧にコントロールできると思っている。インフレ目標2％は2年で絶対に達成できると言っていたし。消費税は人々のインフレ期待に影響はしない、と言っていたし。

　だったら2012年度比で、2014年度の名目GDPがせめて+20兆円を超えないようなら、もう日銀やめて下さいね、迷惑なので、と思っていた矢先でしたので。実質成長込みで年10兆くらいのプラスは確実、消費税分（8兆円くらいかな）考慮すれば、2年20兆など余裕でしょう？

　なぜリフレ派はケインズの名を騙るのでしょう。
　リーマンショック以前は、ケインズなど時代遅れのでたらめな経済学、だったのに。リフレ派のアイデアはミルトン・フリードマンの「マネタリズム」由来でしょう？「ヘリコプターマネー」はフリードマンのレトリックだし、「バーナンキの背理法」だって同じ理屈。岩田規久男氏は日本のフリードマン！……なんじゃないの？確か菊池英博氏がそんなこと言ってたような。

　それがなぜ、リフレ派がケインズを騙るの？中野剛志氏が「大島優子です！」っていう方がまだ解る気がするんですけど。

　なぜそうなってしまうのかと言えば……
　リーマンショックによる、マネタリズム理論、フリードマン主義の破綻、が関係あるのではないんでしょうか。リーマンショックをもってフリードマン主義は破綻したと。それで、急にあわててご都合主義的に50年以上前の英雄であるケインズの名を騙りだしたのではないの？リフレはフリードマンじゃない、ケインズだ！って。

　突如宿敵ケインズにお株を奪われてしまいした。哀れなりミルトン・フリードマン……ちなみにサブプライムバブル真っ盛りの2006年に96歳でフリードマン氏は亡くなりました。

　本当はケインズなど大嫌いなのに。だから本物のケインジアンを「似非ケインジアン」呼ばわり。最近では更に、ケインジアンをマルクス主義者のように言う人まで出てきた。上念司氏、倉山満氏の他、水島総氏までも。

ケインズ＝リフレ、ケインジアン＝マルクス主義、というおかしなレッテル貼りで安倍政権批判のケインジアン封じ込め、って気がしています。

　ケインジアンが邪険にされた挙げ句、こんな本が高く評価されているなんて。もう日本もおしまいだな、なんて、こう陰鬱な気分で作文してしまったので。そういうフラストレーションが文面に出ていましたね。

そんな時になんと。

師匠から強力な援護が！

　12/28の夜に気付いたのですが、師匠（中野剛志氏）の不定期メルマガ（200円）が12/26に配信されていました！なんかリフレ政策、岩田規久男氏の話だって。なんてタイムリーなんだ！早速、読んでみましたよ。

岩田規久男先生の理論を徹底的に批判する！ －なぜ、金融政策はデフレを止められなかったのか:ちょく論ー識者による寄稿マガジンー:ちょく論(ちょく論) - ニコニコチャンネル:社会・言論

……いやー、こりゃ参りましたよ。「バーナンキの背理法」がおかしいことを完璧に説明されてしまいました。これは「リフレ政策の正しさ」を説明できていない。っていうかケインジアンの正しさを証明しちゃってるんじゃん！

　私これ以前「理論的にはとりあえず正しい」なんて書いてしまったんですけど。うわー、なんか恥ずかしいぞ。それなりには師匠の論説に近付いている部分もあるのですが、本質が見抜けていないため、なんかぼやけた話になっちゃってる感じ。

　「バーナンキの背理法」の記事、自分ではなかなか良い出来だ、なんて思っていたんですけど。こりゃせいぜい60点くらいだな……「魚の量的緩和」とかの頃は結構いい線いってたのに。相手の論理に引き摺られてしまいました。

というわけで、久々に師匠のメルマガを読んで元気が沸いてきましたよ。

てな訳でこれ、いずれなんとか自分の言葉で表現してみたいと思います。

※ なんか昭和っぽい雰囲気ですけど。意外と新しい。

マンガ ケインズ 大不況は解決できる!