二つの国民
先日実家へ行き、両親に会った。二人とも七十代。夕食の後、一緒にTVを見てしまった。十数年前の2時間ドラマの再放送で、岸本加世子さん主演。これだ。
松本清張特別企画「ガラスの城~修善寺温泉殺人旅行~」:2015年2月15日(日)夜7時00分|BSジャパン
普段はTVを見れない環境なこともあって、つい何となく最後まで見てしまった。
社内慰安旅行とか社内不倫とか出世競争とか、前世紀ドラマにありがちな設定で、なんか古くさい。いまいちリアリティがないな。老人にはちょうどいいのか。ってまあ、この話自体はどうでもいいんだ。ここでは、明らかに暇な老人向け番組、というのがポイントだ。
その年寄りターゲットのTV CMがとても異様に感じたのだ。
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手のひらに乗るようなサイズの錠剤のボトル。どれもこれも5000円とかする。30分以内に電話してね、今だけオペレータ増員するからって。他のメーカーもやってた。有名タレントが出てきて、これは凄い!私も毎日飲んでます!って。円楽師匠とか中尾ミエさんとか。その他、二十歳くらい若く見えるような超元気な素人さんとか。で、同時にテロップも出てて、これは個人の感想だとか効き目には個人差があるとか。
後はユニセフ。恵まれない世界の子供たちを救おうって盛んに寄付を募ってた。
こんな、普通に生活できてりゃ全く必要なさそうな、効能すら怪しそうなものが5000円?誰が買うんだ?なんて思ってしまうが、需要はあるのだろう。ユニセフもしかり。国内問題山積なのに、それは放置でアフリカの恵まれない子供を救済か。グローバルなんだな。まあ、あれだって商売みたいなものか。要するに金余り老人にたかっているってワケだ。*1
ユニセフはオレオレ詐欺に寄付するよりマシなのだろうか。どちらも「貧困ビジネス」の一種であって、大差ないんじゃあないのか。そんな皮肉を考えてしまう。国内の貧乏な若者に寄付した方が日本経済には良さそうだが。
本当に異様だった。そこはまさに「ケインズの予言」通りの世界。経済問題から解放され、退屈こそが最大の課題となった世界が体現されていた。しかし、その様子はどこか浮世離れしていて隔世の感がある。三十年後の俺にはここまでの余裕はなさそうだ、とは思った。かと言って、彼らが特別幸せそうに見えるわけでもない。
※ケインズの予言の話はこちら
ケインズは死んだ - 強靱化のすすめ
商売の対象とされている老人を思うと、たとえ岡田斗司夫氏が詐欺みたいな事を説いていたとしても、それはそれで納得してしまう。TVを見ている老人も、円楽師匠もユニセフも、彼らにとって経済とは既に二義的な問題、どうでもいいようなことなのだ。岡田氏はそういう前提で話しているだろう。そして岡田氏も堀江貴文氏もそちら側にいる、ということだ。
彼ら自身にとって経済など二義的な問題だ。退屈をもてあましている。金に困ることもない。で、誰かの役に立ちたいと活動する人もいるし、或いは仲間を募ってクラブ活動したりとか。個人の趣味に没頭する人もいる。
しかし、そうではなく、経済とは一義的な、死活問題の人も明確に存在する。サントリーの人、オレオレ詐欺の人。アフリカの子供たち。
アフリカの子供たちは外国の人だが。それ以外、同じ国に暮らしながら、全く相容れない層ができてしまっていることを指して「二つの国民」(Two Nations)という。
二つの国民
二つの国民とは、イギリスの政治家、ディズレーリの言葉です。小説家でもあった彼は、ヴィクトリア王朝時代の1870年代に首相を務めました。ジョナサンとディオが出会った頃かな。当時のイギリスは貴族階級と無産階級の格差が激しく、全く相容れることのない「二つの国民」という表現でディズレーリは小説を書いたそうです。なんら生活に不自由のない貴族ジョナサンと、ロンドンの貧民街出身のディオ。(それを書いたのは荒木飛呂彦氏ですが)
ジョナサンにとって経済は二義的な問題だがディオにとっては死活問題。ジョースター家のように、二義的な連中が一義的な連中に施しを与える、或いはディオのように、二義が一義から奪い取るッことで、この問題は解消するのだろうか。
つまり再分配制度の問題なのだろうか。ジョナサンほどの紳士なら、或いはディオほどの「生まれついてのワル」なら、「富の再分配」是正は可能かも知れない。「いい人戦略」ってのは難易度が高そうだな。
……あれ? いったいなにを書いている?
当初考えていたことから、いつの間にか大いに脱線してしまいました。
今回はとりあえず「Two Nations」という概念を覚えておいてください。
尻すぼみな感じなので、またそのうち書き直します。多分。
なっ!
何を書いているだァー!
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*1:うちの親はサプリも寄付も興味ないようでした。