バーナンキの背理法

先日引用したリフレの話。続きをやります。


リフレ政策はトリクルダウン理論じゃないよ、という話 - 児童小銃


 サイト見てたら ”バーナンキ推し” のようなので、これ追加記事が必要かなあと。QE2みたいなものです。QE3もあると思いますけど、リンクはもうやめるつもりです。なんかクソログ(※) みたいになってますね。


QE1の記事、未読の方はこちら。

「アベノミクス 第一の矢」の理想と現実 - 強靱化のすすめ

バーナンキ氏の功績

 百年に一度の経済危機とまで言われたリーマンショック。数兆ドルに及ぶ不良債権の処理に尽力し、アメリカ経済になんとか復旧の筋道をつけたバーナンキFRB前議長。氏の功績は見事なものだと思います。
 しかしまあ、そもそも危機を引き起こした張本人の一人なんだから、これマッチポンプだろ、なんて言われても仕方ないような。

バーナンキ背理法

 日本で有名な論説「バーナンキ背理法」というのがあります。ネットで出回っている話は以下のようなもの。解りやすくするためでしょうか、本人の論説からは改変されています。なんか大げさな話になっていますが、氏の論説の応用編で、一応同じような論旨にはなっています。

 もし仮に、いくらカネ刷って供給してもインフレにならないなら、政府は徴税する必要がないよね。国債だけで国家予算をまかなうことが出来るよね。っていうか、国債償還さえする必要ないよね。いくらカネ刷ってもインフレにならないなら。国は好きなだけカ刷って好きなように使えるよね。これなら無税国家の成立です。
 
そんなのあり得ないでしょ。これじゃあインフレになるに決まってるよね。


だから量的緩和さえやっていれば、必ずインフレになるんだって。当たり前。
なぜこれがわからんのだアムロ


 とまあこんな感じ。理論的にはわかるんですけどね。でも現実はどうなのよっていう話。現実見てくださいよって話です。こういうの、理論的には矛盾が見られないようでも、現実は違うじゃないですか。

二百兆円どこへ行った?

 考えてもみてください。もしこれが本当なら日本はとっくにインフレになってる。少なくとも、例えばリーマンショック以降でみたら、日本政府は毎年40~50兆円も国債出しています。この七年間で、三百兆円以上の国債発行。まあ仮に百兆くらいは償還されてるとしても、二百兆くらいは確実に通貨量が増えてるんですよ。


 資金供給ってことなら、今の金融緩和だって一応「日銀の債務」という格好で通貨を増やしているんだから。「債務」を増やすことで日本に流通する「通貨量を増やす」という建前は同じなんです。

 ああそうだ、それに今は国債マイナス金利じゃないですか。政府は資金調達してしかも利子もらえるんですよ。日銀は逆に国債回収でマイナス金利を負担しなきゃならない。

 政府の国債よりも、日銀の量的緩和の方が資金調達コストは高いんです。政府よりも日銀による資金供給の方が優れている、とは言えないでしょう。(そもそもこれ日銀と政府を区別してなんか意味あるのかってツッコミはちょっとおいて下さいね)


 それに「金融緩和」は銀行への資金供給なので、どこでどう使われるか全く解らない。対して国債による政府債務は、ほぼ全て、確実に、強制的に、日本国民への資金供給になる。

 政府のやり方には無駄が多いからイカン、なんて言うけれど、無駄が多いほど余計なコストが掛かるんだから、その方がかえってインフレにはなりやすい。だったら「インフレ期待」だけなら、むしろ国債発行の方が確実性が高いはずですよ、理論的には。


 ゆえに、上で紹介した「バーナンキ背理法」通りなら、2014年の日本の名目GDPは七百兆円くらいないとおかしいんです。名目で年6~7%くらいのインフレになってるはずなんです。でも全然なってない。なぜなのでしょうか?増えたはずの二百兆円はどこへ行っちゃったのさ?


ちなみにこれ、1960~80年代辺りでは、この「バーナンキ背理法」的な状態は、概ね成立していました。でもそれが全く成立しなくなった。


これだけ資金供給しているのに、なんでインフレにならないのか。
よく考えてみてください。


それは金融政策の問題じゃない。
そんなのは行政の問題だ。
中央銀行は関係ない。


私は量的緩和を支持する知人から、そんな説明を聞いたことがあります。
その通りだと思います。


そんなのは行政の問題だ。中央銀行は関係ない。政治家が悪い。銀行が悪い。保険会社が悪い。ヘッジファンドが悪い。証券会社が悪い。企業や国民が行動を変えないのが悪い。要するに企業が悪い。国民が悪い。

バーナンキ議長は悪くない。黒田総裁は悪くない。
岩田副総裁はもっと悪くない。やめる必要などない。

間違っているのはリフレ理論ではない。実体経済の方だ!


 ええ、全くその通りです。リフレ理論は間違ってない。実体経済が間違っている。リフレ理論が通用しないのはそのためです。実体経済がデタラメなのです。国民は「合理的経済主体」ではないんです。非合理な行動をするんです。当たり前でしょう。金融経済なんて更にもっとデタラメなんですよ。どれだけ酷いことになっているのか、QE1の記事で書いたとおりです。「北斗の拳」の世界みたいなもんです。リフレ理論なんて、金融経済の前ではやりたい放題、徹底的に悪用されちゃうんですって。安倍首相も黒田総裁も、ウォール街じゃあいい笑いものですよ。バカにされてますよ。こんなデタラメなマフィアやチンピラが相手じゃあ、リフレ理論なんて通用しないんですってば。

っていうか、そもそもリフレは金融マフィアのための政策になってる、と言って過言では無いと思う。


 インフレとか景気回復とか財政均衡とか、バーナンキ議長や黒田総裁、彼らの立場じゃあ大してなにも出来ないんですって。緩和マネーをヘッジファンドに毟り取られて終わり。で、その分保険会社、証券会社、素人マネーゲーマー、銀行、あたりが泣きを見る。かもしれないよ。

大事なことなのでもう一度言います。

 それは金融政策の問題じゃない。そんなのは行政の問題だ。中央銀行は関係ない。政治家が悪い。銀行が悪い。保険会社が悪い。ヘッジファンドが悪い。証券会社が悪い。企業が悪い。国民が悪い。バーナンキ議長は悪くない。黒田総裁は悪くない。岩田副総裁はもっと悪くない。


中央銀行は関係ない。


 ああ、ちなみに上の例で出てきた、七年分の国債発行で増えたはずの二百兆円。貯金になって銀行に入っていますよ。国債発行すると、結果的には銀行の預金残高がどんどん増えちゃうんです。なぜでしょう?
これが日本経済の問題。現実世界での問題の本質です。

まとめ

 リフレは「理論的」に正しいです。だからもう理論はいいから、ちょっとは現実を見て話をしてください。

 QE3の記事は想定問答かな。リフレ派の反論はもう解ってるので。緩和マネーを全部定着させる必要ないだろとか、クラウディングアウトがどうとか。後はリフレ詭弁術とか。長期と短期の話を都合よく混ぜたりすり替えたり。

 なんかつまんなそうだな。もう答えは大体書いてあるし。どうしよう。是非読みたい、という人はいますでしょうかね。もう飽きちゃいました?



※)クソログ師匠。(名前が変わるかも知れません)


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オススメ!

しません。


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