美人投票

① AKB総選挙

山本彩(やまもとさや)
BOMB!(ボム!) 2016年 02 月号 [雑誌]


 さや姉チョーかわいいマジ天使推すしかない写真集も買っちゃうし総選挙じゃ絶対勝つに決まってるしよーしパパ頑張っちゃうぞゼッタイ勝って欲しいからCD100枚買って投票しちゃうからねさやちゃん握手しに逝くから待っててね!*1


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さやちゃん6位か残念だけどでも頑張ったよねすごいよでもなんで指原が一位なんだよさやちゃんの倍も得票してるじゃねえか有り得ねえだろチクショー次回こそはさやちゃんがトップになれるように俺も頑張るからさやちゃんも頑張ってね!


                                  


 …………まあなんつーか、よくできた商売です。選挙もマーケティングの結果としてメンバーの立ち位置とかグッズ販売計画とか各メンバーの売り出し方とか、色々と戦略も立てられるのでしょう。これはわりと分かりやすい「市場原理主義」のパターンだと思います。AKBに限らず、現代経済とは基本こんな感じで成り立っている、ということになっております。


さて、ところでこれは経済学的には「美人投票」でしょうか?


美人投票」とはご覧の通り、はてなキーワードにも登録されておりまして、実はケインズ経済学の一般理論に出てくる経済用語の一つです。実は投資家の行動論理を検討したのが「美人投票」です。
 
上の話は基本的には消費者の話。じゃあ投資家の場合はどうなるの?


ということで以下、経済学的「美人投票」のお話。


② AKB株式市場

 メンバーを株式上場します。株を持っている人は、決算期に(例えば)株式評価額に対して3%の配当金が出るとか、株主優待として持ち株数に応じて優先的に握手とかチェキだとか、或いはライブでいい場所が取れたりとか、写真集が持ち株100株につき5%割引で買えるとかするワケ。もちろんメンバーは法人経営者扱いなので、経営者としての限定責任だけですから、全然「人身売買」とかじゃありませんのでご心配なく。


 で、日本の場合、2/3くらいの投資家は、基本的には①と同じような動機、さや姉を応援したい!というような(割と)純粋な動機で株を持っています。ところが、後の1/3の投資家の行動原理は全く異なります。


 「俺」は後者の投資家。ひとまずやっぱり推しメンである山本彩株を買います。

 上場株式ですから証券取引所で(証券会社経由で)買う。100万円分買いました。しかしどうも俺の思惑通りはいかず、どうも今ひとつさやちゃんの人気は上がらない。株価が10%も下落してしまって10万円の含み損になってしまった。それに引き替え指原株は毎日上がってる。これだったら指原株買ってた方がよかったかな。
 
 20%も上がってるから120万になってたはずなのに。しまったなあ。まあ別に指原とか握手したくもないけど、でもこのまま山本株を持っててもジリ貧な気がするし、指原株はこの先もまだ上がりそうだし買い換えちゃおうか。
 
 ああっ!峯岸株が熱愛発覚で大暴落してる。研究生に格下げだとかでなんかもう連日ストップ安、もし買ってたら100万が20万になっちゃうところだった。ふう危ねえ危ねえ。

……いやしかし、もうこれ以上は下がらんかも……?
とすれば今が押し目、買い時……?峯岸復活来るか!?


う~む~、こうなると推しメン一人だけに全部賭けるのって危ないよな。何があるか分からないしリスク分散しないと。それに、よくよく考えてみると、AKBだけに全て賭けるのも危険じゃないのか。ポートフォリオはもっとよく考えておかないと。


そうだな。西内まりやちゃんと、

ありがとうForever… (初回生産限定盤) (CD+DVD+ミニフォトブック)


℃-ute矢島舞美ちゃん。

矢島舞美 写真集 『 Nobody knows 23 』


俺のポートフォリオ:指原30 山本20 峯岸10 西内20 矢島20

こんなもんでどうだ。


                                  


……おっさんアタマ大丈夫か……

と呆れてしまったそこのあなた、分かっています。自分でも、なにアホなこと書いてんだろうと途中で辛くなってしまったのですが、頑張ってここまで書いたんです分かって下さい。

えっ?もっと西内を買うべき?



 実際、株式市場ってこういうものです。

 個人的にはさや姉のファンだったとしてもキャピタルゲイン(株価上昇分の差益)を求めるなら、さや姉の株だけを買ってもリスクが大きすぎるし、まず儲からない。ので色々な事象を想定してポートフォリオを設定するわけです。

自分の推しメンではなく、誰が推されそうなのか、に賭ける。
それが真の「美人投票」です。


「① AKB総選挙」の方は、割と普通の市場原理です。自分自身の限界効用理論に従って好きなだけ、さや姉だけ、を応援すればいい、という経済学的モデリングで、まあ差し支えないのでしょう。

 消費者、及び投資家の2/3は、割とフツーにさや姉を応援する。でも投資家の1/3は異なる動機で動くということです。株主配当や優待ではなく、キャピタルゲインを狙う行動は「投資家」というよりも「投機家」と言ってしまって差し支えないでしょう。この1/3の投機家は資本主義にどのような影響を及ぼすか。


 今の日本の株式市場の売買金額は1日当たり2~3兆円。対して日本のGDPは1日平均1.3兆円程度。実体経済の2倍ものカネが株式市場で動いている。にもかかわらずこの投機家の行動は、現代の経済理論には基本的に組み込まれていない。いわゆる金融商品も、①の理論でしかモデル化されていないのである。

これが実体経済を大きく歪める原因となっている。


以下、ケインズの一般理論より。

投機家は、企業の着実な流れに浮かぶ泡沫としてならば、何の害も与えないであろう。しかし、企業が投機の渦中のなかの泡沫となると事態は重大である。一国の資本発展が賭博場の活動の副産物となった場合には、仕事はうまくいきそうにない

(「ジョン・メイナード・ケインズ『普及版 雇用・利子及び貨幣の一般理論』塩野谷祐一訳 東洋経済新報社、1995年、157ページより)*2

株式市場が1日2~3兆円、実体経済が1.3兆円。どちらがケインズの言う「泡沫」でしょう。


 もちろん、1980年頃までは主流派であったケインズ経済学では「美人投票」現象が考慮されているわけですが、現代の主流派経済学では完全に無視されています。


今日はここまでです。
いずれ続きをやるかも知れません。
 

 
 *2 この引用は、以下の本の118ページより参照しました

保守とは何だろうか (NHK出版新書 418)

保守とは何だろうか (NHK出版新書 418)

*1:無双!中野学校生は大島優子さんを推すのが暗黙のデフォだったのですが、卒業されてしまった……