日本はISIL問題の当事国か?


「反戦メッセージ」を無意味にしてしまう3つの魔法 - 温玉ブログ


 プチ炎上案件。過去記事をつらつらと見たところでは、結構攻撃的な方のようです。まあ、私も昨年まではリフレの話をするとすぐに「バカ」だの言ってましたけど。ISILと反原発の件が書いてあって、題材としては面白いので取り上げてみます。
 
その前に。気になったのは批判的ブコメのうち「対案を出せ」というのかな。
 
 結構ありがちですよね。「批判するなら対案を出せ」「他に何かいい手があるのか」
案件にもよりますが、私が思うには対案は必ずしも必要ありません。上の記事では「安倍は余計なことするな」ということのようなので、何もしないのが対案ということです。
 
 安保問題だと、この方がどうなのかはよく解りませんが、例えば鷹巣直美さんなんかにしてみれば「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」のだから、それが対案。というか、彼ら側が「日本代表の本案」で「安倍政権側が対案」です。アメリカも中国も北鮮も全て信頼すると主張しているのです。そりゃ破綻している気がしますけどね。でも彼らが本案なんだから対案は必要ない。憲法にそう書いてあるんだから。

或いは

 以前私は、尖閣を中国が奪取しようと行動を起こした場合に、アメリカは尖閣を防衛しない。ので日米安保は抑止力としてはある程度は作用するが、本当に紛争になったら全く当てにならない、という趣旨のことを書きました。最近の記事では、日本経済弱体化のしわ寄せが若い世代にいき、貧困化している、とか。リアルでこういう話をすると、

「じゃあどうしろって言うんだ」「なにかいい解決方法があるのか」

とか言われます。こういうのも、まず対案がどうこうって話ではありません。厳しい現状から目を背けるな、ご都合主義はやめろ、現実を直視すべきだ、という話。処方箋がないからって目を背けていいとか放置すべき、ってことはないでしょ?処方箋なんかない。対案はあるけどね、軍備なんて何年もかかるような話だし、実現可能なのかも解らない。尖閣はもう手遅れ。中国次第。日本側に大したことはできない。

とまあ、前置きはこんなもんで。本題に入ります。

ISIL問題

 ISILの問題って、俺は当事者なのだろうか。遙か彼方で戦争が起こっていても自分と何か関係あるとは思えないよね。これ、ミクロの水準では当然そうです。自分がこの問題の当事者だとは到底思えない。なので、じゃあ「安倍は余計なことするな!」と言うことはどうなのか。こうなるとミクロの話ではありません。ので、別の判断基準が必要になります。これは決して他人事ではありません。

ISIL入門

本題前の基礎知識として、もの凄い雑な話をします。
詳しく知っている人は記事を書いて教えて下さいね。

 まず、イスラムの宗派で有名なのがスンニ派とシーア派。皆さんも聞いたことがあるでしょう。この地図はWikipediaからの引用。緑系がスンニ派、紫系がシーア派


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ポイントは以下の3点。地図と見比べて要点を押さえて下さい。
1. サウジアラビアはスンニ派で親米
2. イランはシーア派で、反米
3. イラク、シリアは混ざっていて、イラクシーア派寄り、シリアはスンニ派寄り。


特にイラク戦争後、アメリカはシーア派のイランを「悪の枢軸」と呼び、経済制裁などで迫害しています。ここまで、よろしいですね!?


 超大雑把に言うと、欧米は元々反イランのスンニ派を懐柔していました。サウジアラビアが代表的で、イラクフセイン元大統領もスンニ派。なので1980年代のイラン・イラク戦争の時には、アメリカは当然の如くフセインイラクを支援しました。で、ソビエトがイランを支援。しかしソビエトなき2003年。アメリカはイラク戦争で、そのスンニ派のフセイン政権を倒してしまいました。

 その結果、イラクでは多数派だったにもかかわらず、フセイン政権下で迫害されていたシーア派が力をつけてきて、今のイラクでは主流派になりました。まあ、普通選挙をやれば当然多数派が勝つので。ゆえにアメリカのおかげでイラクが親イラン化するというやっかいなことになってきた。まあ自明の理ですが。アメリカ最悪。ちなみにシリアのアサド大統領もシーア系。


 で、フセイン政権下では優勢だった、元は親米だったはずの、米軍にやられてすっかり劣勢になってしまった、スンニ派による反乱軍組織ISILが勃興した、というわけです。これは起こるべくして起こっている。サウジなんかからも、おそらく多数のテロリストが参加している。親米であるサウジの現政権はISILに直接関知はしていないだろうけど、イラクやシリアにシーア派の政権が出来るのはイヤなので、内心ではISILの方にシンパシーを感じている、という可能性は否定できない。

 昨年、イランに対する経済制裁が大きく緩和されたのもこれが原因。ISILはスンニ派なので、アメリカはサウジの力を借りることが出来ない。ので仕方なくイランに対する経済制裁を大幅緩和することで、イランの力を借りようとしている。原油価格が大幅に下がったのもこの制裁緩和が関係してるんじゃないかな、と個人的には思っている。だってこんな下がったら、アメリカのシェールガスヤバイでしょう。つまり、それ以上にISILがヤバイってことなんでしょう。


 というわけで、イラク、シリアでは、スンニ派もシーア派も、どっちも反米になってしまっています。どっちに転んだってもうアメリカは事を収めることは出来ないでしょうね。これがISIL問題の現状です。大雑把な枠組みは理解頂けましたでしょうか。


というわけで、今回はまず基礎知識編でした。

次回は、じゃあ日本はどうして当事国なのだろうか、という話(のつもり)です。


参考記事1
ISILによる日本人人質殺害事件の本質:ちょく論ー識者による寄稿マガジンー:ちょく論(ちょく論) - ニコニコチャンネル:社会・言論

参考記事2
ISILはアメリカの置き土産・・・混乱こそが欧米の利益を生み出す中東情勢 | 人力でGO

参考文献

世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)

世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)