法人税は安い程いいのだろうか

さて、いよいよ消費税増税となってしまいますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

消費増税にあたって、景気対策のため法人税を下げるべし!とかいうことで、経団連経済産業省産業競争力会議など、方々から圧力?的なもの、いや要請でしょうか。そうですよね。そんなんがあるようですね。日経新聞も当然、法人税減税派。彼らの言い分は、

① 税金で持って行かれてしまっては、企業は思うように投資できないし、従業員の給料も上げられない
② 企業の公的負担が国際競争力の足枷になっている
③ 上記の理由で、優良な日本企業が海外へ拠点を移してしまう
④ 海外から投資を呼び込めない。海外企業を日本に誘致できない

といったとろでしょうか。それぞれについて、議論というか、私なりに所見を述べてみます。

① 税金で持って行かれてしまって思うように投資できないし、従業員の給料も上げられない

 なんかこの論法、最近よく強調されていますね。テンプレの先頭っつーか、模範解答っつーか。なんかもっともらしい主張ですが、いやちょっと待った。これってヘンですよね!設備投資とか従業員の賃金とかボーナスとか、経費を全部払った後の利益に法人税ってかかるんでしょ?

日本経済が絶好調だった頃は、つまり1980年代とかだと、これ話が全く逆でしたよ。
 日本の法人税は高い → 利益を残しても国に持って行かれてしまう→じゃあ税金取られる前に使ってしまえ
税金で持っていかれるくらいなら、ということで、利益として現金を残すよりも設備投資、従業員のボーナス、研究開発などに企業が振り向けるようになる。ので、民間経済が活性化する!だから法人税が高いのはいいことなんだ!という論法がかつてはありました。いつの間にか逆になってる。 確かに法人税率低い方が、法人としてのお金の使い勝手はいいのでしょうけど。経済の活性化に繋がる、というのは詭弁ではないでしょうか。

② 企業の公的負担が国際競争力の足枷になっている

 昨今の少子高齢化により、確かに厚生年金や健康保険などの社会保険関連の企業負担は増加する傾向にあります。よって彼らの言い分には一理あるような気もします。正社員を雇いたくない理由のひとつにもなっているのではないでしょうか。しかしこの観点だと、社会保険ってのは企業の業績とは無関係に負担しなければならないわけで、法人減税だと黒字企業だけ優遇することになってしまうので議論としてはヘンですね。法人税と違って、赤字企業だからって社会保障費は減るだとか免除されるだとかは、ありません。
 厚生年金なんかは、確かに元の設計が古く、平均寿命が今より10年以上短い、というような頃に設計されたものですし、高度経済成長も長期経済停滞も考慮されていないので、適宜調整していかなければならないでしょう。しかし、国民年金と統合しろ、とか税金で一本化してしまえ、とか乱暴だなあ。厚生年金保険加入者の私としては、損する予感しかありません。おっと話が脱線してしまいました。とにかく法人税とは全く別に、議論が必要でしょう。

③ 上記①②の理由で、優良な日本企業が海外へ拠点を移してしまう

 そんな経営者は、初心に帰ってピーター・ドラッカーの本でも読んで欲しいところ、なの、です、が……
日本は税金が高いからイヤだ、ということなら、まあアンチ・ドラッカーなんでしょうね。どこの国でも行ったらいいんじゃないでしょうか。もう既に日本企業ではなく、純粋なグローバル企業ですね、それは。グローバルに活躍できない、日本から移動できない人間など知らん!という企業家や資本家ならまあ、日本から出て行ってもらえばいいのではないでしょうか。なんて、私如きが言うまでもありません。失礼致しました。

④ 海外から投資を呼び込めない。海外企業を日本に誘致できない

 だいたい、国内に十分カネはあるんだし、なんで海外から投資を呼び込みたいのでしょう?っつーか、海外からカネが入ってくるとマンデルフレミング的には円高になったり金利が上がったりでマズいんじゃなかったっけ?国債じゃなければ、関係ないんでしょうか?イマイチよくわかりませんね。
 こんだけ低金利で、異次元量的金融緩和やっても国内で全然投資が増えないってコトは、要するに日本て投資対効果がもの凄い低い、つまり魅力がないってことなんじゃ?日本企業だって海外投資が増えているし。グローバルな日本企業で、積極的に国内投資しようってトコがあるんでしょうかね?そんな状況で海外から投資がくるんでしょうか。法人税率以前に問題がありそうな気が。投機資金は結構入っているようですけど。海外から投機的にカネを出し入れされてもねー、経済不安定化の要因になって、却って逆効果な気もします。


……そういえば、パンダ先生も法人税の記事を書いていたような気がするぞ。

法人税減税をどう見るか - パンダのぼやき


まあ、なんか、やっぱり私の記事、情緒的ですけど、そんなに、的外れなことは書いてない、ような気がするッ。一安心です。

まとめ

 ブレトンウッズ期から1980年代くらいまでは企業の利益=国民の利益、という形で割と一致していた。ので、企業の発展が国民の幸福にも繋がっていました。それが徐々に変わっていき、2000年以降は特に、グローバルに金を稼ぐ、というのが主流になってしまった。ウォール街由来の、いわゆる強欲資本主義 ( グリード・キャピタリズム )です。非正規雇用拡大、解雇規制緩和、移民労働者受入の検討。どれもこれも賃金低下、雇用不安定化圧力です。企業のグローバル戦略、生き残り戦略を重視すると、国民は貧しく、苦しくなる。企業の利益と国民の利益はもはや一致しなくなったのです。つまり企業の目的と国家の目的は、相反する時代になった、ということでしょう。
 産業競争力会議とか、もうやめた方がいいと思います。国家がやることではありません。逆だよ逆!それとも、もう既に日本は「国民国家」ではなくなってしまったのでしょうか?