世界大戦の教訓

前号までのあらすじ

 当初はごく個人的な、寝台特急あけぼの「乗り鉄」ツアーでお話がスタートしましたが、いつの間にやら地方行政の話に。そして地域主権道州制はまやがしだ!などと持論を展開、ついには国家全体の公共政策がなっていないのだ!と日本国政府批判をおっ始めました。そして今回はなんと連合国の陰謀、更には世界大戦へと事態は拡大。

(前回の記事はこちら → 「破壊」が「政策」と言えるのか - 強靱化のすすめ

各国の穀物自給率推移

 前回の話は情緒的だったので、っていうか、いつも情緒的ですかね。で、今回はデータを元にやってみます。農林水産省の資料室ページから頂いたデータを元に、穀物自給率の推移グラフを作成してみました。
農林水産省/世界の食料自給率

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 フランスは元から農業大国ですが、工業先進国であるドイツまでもが意外にも穀物自給率は現在100%を超えています。イギリスも100%近辺です。1960年頃はイギリスが53%、ドイツが63%でした。実はこの、穀物自給率100%を目指す政策って、世界大戦からの教訓、という面が大きい。

 意外に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、世界大恐慌のあった1929年近辺は、自由貿易が活発で、ある意味今以上にグローバル化が進んでいた、とも言われます。当時のヨーロッパは、南北アメリカやその他の植民地から入ってくる、格安の穀物を始めとした農作物により、主産業であった国内農業は大ダメージを受けました。

世界大恐慌今北産業的解説

そしてアメリカ株の大暴落から始まった世界大恐慌産業革命、植民地経営、過剰な自由貿易の影響で、ヨーロッパ各国の農業はどんどん弱体化、恐慌から始まったブロック経済が元で各国が対立、益々世界経済は混乱、そして世界大戦へと繋がっていきます。(……この話は、ちゃんとやると、大変長くなるので、今回は3行で失礼致します)

世界大戦の反省

 戦争当事国では、この『過剰な自由貿易ブロック経済→世界大戦』の反省の一つに、穀物自給率100%を目指す、というのがあって、イギリスもドイツも何十年もかけて、国策として穀物農業に投資し育成しています。儲かるから農業をやっている訳では全くありません。フランスやアメリカですら補助金が使われています。あくまで二度の世界大戦からの反省・教訓なのです。敗戦国である日本が、この辺一番反省していないわけです。戦勝国側の、日本を脆弱化させる一つの手段、という可能性もなきにしもあらずですが(ってのはちょっと陰謀論入ってますね)。

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(このグラフはこちらから引用させて頂きました。→ 図録▽世界の穀物自給率

日本や韓国ってのは、国家規模が結構大きい割に、異様に穀物自給率が低い。うがった見方をすれば、アメリカの下僕として、穀物余剰生産分の価格・在庫調整に使われている、という側面が、なきにしもあらず。

地方投資の必要性

 生産性の高くない、山間の棚田なんて、オーストラリアやカリフォルニアなんかにはまるで歯が立ちません。広大な平地だってまず勝てないんだから。だからこそ日本は、国策として積極的に投資し、穀物農業を維持拡大すべきです。日本のような大国だったら、農産品、特に穀物自給率は100%に近づけなければダメでしょう。要するにエネルギー問題なんです。自前のエネルギー資源を持つ、というのは最大最優先の国家安全保障項目です。

 さてこの、グローバル化→アメリカバブル崩壊→恐慌→ブロック経済→世界大戦、とつながっていった、当時の混乱て、現代におけるリーマンショックにはじまる現代の恐慌と共通点が多い、という学者さんが結構いるようです。私は以下の、柴山桂太先生の本で読みました。

静かなる大恐慌 (集英社新書)

静かなる大恐慌 (集英社新書)

この本、スゲー面白かったので、いずれ紹介したいと思います。


 都会に住んでいる人にしたって、安全でおいしい、国産の農作物や魚介類を食べたい、という人が大多数なんだし、だったら地方に投資することに対して、やたらと無駄だとかヤメロとか、甘ったれるな、とか言うべきではないと思います。まあ、どう使うのか、どう使われるのか、なにが有効なのかとか、よく吟味したり長期計画たてたり、は必要だとは思います。これって本当に難しい問題です。
 とにかく、規制緩和だ!ドリルでぶっ壊せ!というのだけは、もうやめて欲しいです。



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