「アニメ声優」の演技について

 『響け!ユーフォニアム』主演の黒沢ともよさんの演技がスゴい!ってんで話題になってた。のでいっちょ噛みというか異論を呈しておく。(アニメの話って面白くするの難しいんだよな……)
 
goo.gl
 
 確かに「ユーフォ」見てると黒沢さん天才!って思うのは分かる。例えば、作中の相手によっての微妙な態度の違いとかの表現。①母や姉、秀一のようなごくごく身近な相手、②部活での親しい同級生、③親しい先輩、④そうでもない先輩、との距離感の微妙な違いの表現なんかを、わざとらしくなく自然な演技で、声色やテンポ、ニュアンスの微妙な差異だけでやってのける、そこにシビれるあこがれるゥ!「アニメテンプレ的な演技ばかりの他の声優さんとは格が違う」みたいな意見が出てくるのも分かる。

 しかしこれ、「ユーフォ」での話であって、他のは意外とそうでもないんだよな。まあ、そんな多く見たわけじゃないんだけど。先期の「サクラクエスト」じゃ、そのリアルっぽさが逆に浮いてた感じだし。今期の「宝石の国」もすごく頑張ってるのは分かるが際立って素晴らしい!というほどでもないし、私としては「宝石」では、どんな作品のどんな役でも相変わらず安定してそつなくこなしてしまう茅野愛衣さんスゴい、という印象の方が強い。
 

なんでだろう

アニメ作品て必ずしも、「リアルな演技」や「自然な演技」が求められている、訳ではないんだよな。むしろ逆の場合も多い。「わざとらしい、不自然な演技」の方が求められる、ということも、実はよくある。典型としてはJOJOとか。Steins;Gate とか。


「誰だ?って聞きたそうな顔してんで自己紹介させてもらうがよ。オレはお節介やきのスピードワゴン!ロンドンの貧民街からジョースターさんが心配なんでくっついてきた!!」
「震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!!」
「親父の死体と一緒に死ねて、うれし涙を流しなッ!」


 第一部ばかり……


 現実の会話では有り得ないような台詞。そもそもリアルな会話じゃないので、「リアルな演技」が無理っていうか存在しない。こういうのってむしろ、思いっきりわざとらしく、滑舌良く、ハッキリとやった方がそれっぽくなる。ジョジョに限ったことではなく、程度の差こそあれアニメ作品て意外とこういう要求ってある。「自然な、リアルな演技」ではなく、「劇画調」「歌舞伎」「オペラ」「紙芝居」みたいな「敢えてわざとらしく、芝居がかった」しゃべり方が要求されることもある。
 
 Steins;Gate も典型。登場人物のみんながみんな、芝居がかったわざとらしいしゃべり方をする。そういう演技が要求されている。「まゆしぃは、がっかりなのでぇす」


www.nicovideo.jp


 よく観察してみれば分かるが、冒頭から最後までの大部分で、けっこう現実離れした不自然な台詞ばかりが延々と続いている。初見だとさすがに違和感が強いかな。でも、この世界観に引き込まれ馴染んでさえしまえば、むしろ自然にすら感じてくる。宮野真守さん、花澤香菜さん絶妙。不自然系演技の達人。


 と言うわけで、ユーフォみたいなとことん「リアル路線」のアニメの方が実は意外と少ない。というか黒沢さんが異様にそっち方向へ引っ張ってしまった感あり。だからアレはなんか、黒沢さんの演技のハマりの良さのせいで他の声優さんが稚拙な感じに見えてしまったところがあると思う。黒沢さん同様に、ユーフォで自然な演技で作風にマッチしてたのは早見沙織さんくらいか。東山奈央さんとかあんま合ってなかった気がするけど、ヘタっていうことではなく作風に合ってなかった、ってことだと思う。



で、早見さん東山さんと言えば「俺ガイル」でダブルヒロインなワケですが。
 
www.youtube.com

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B01CGWEFI2/ref=dv_web_wtls_list_pr_21


 こちらも「学園もの」ということではユーフォと同じですが、まったくリアル路線ではない。抽象化、カリカチュアライズが激しく、非現実的で哲学的なお話。葉山グループとか哲学的ゾンビ集団だよな(特に序盤)。……にもかかわらず、おっさんにとっては、見てると30年も前の記憶が不意によみがえって恥ずかしくなったり苦しくなったりするという、罰ゲームのような作品。抽象化が秀逸。由比ヶ浜バラードバージョンのエンディングを聞いているとマジ泣きそうになる。
 
www.youtube.com


 「不自然な演技」の方が積極的に要求される作品で、東山さんはハマってた。由比ヶ浜結衣とても良かった。早見さんの方が苦労してた印象。特に雪ノ下雪乃カリカチュア的で、どう考えても実在性に乏しく「リアルな演技」なんてそもそもない。難しかったと思う。由比ヶ浜さんの方はまだいそうなキャラではあったが。いやしかし雪ノ下の姉はあり得なさすぎカリカアチュアにもなってないしアレ人間じゃない「ご都合ゾンビ」。ジョナサンに山吹色の波紋疾走してもらった方がいいレベル。
そこだーッ!哲学的ゾンビィィー!


と言うわけで、アニメ声優って「自然系」も「不自然系」も、両方の演技をこなせるのが天才とか達人とか職人。櫻井孝宏さんとか杉田智和さんとか。花澤香菜さんとか悠木碧さんとか。既出の早見さん茅野さんもか。やや自然演技派寄りの印象だが。



で、黒沢さんの話に戻るけど。ご本人はリアルさの方をとことん追求されているようで、不自然系演技はあんま眼中ないのかな、という印象。


 「サクラクエスト」では生意気で痛々しいクソガキ(中学生)の役だったんだが、あまりにリアルに痛い子すぎて、何もそこまでやらんでも……っていう。作品の、のんびり暖かくもどこか哀愁ただよう雰囲気、には合っていなかったかな。主役メンバーがあんまりリアル路線ではなかったし、黒沢さん脇役なんだし、むしろ徹底した役作りよりも、作品の雰囲気に合わせる方向性の方が良かったんじゃないか。母親のノンビリした雰囲気ともズレが大きく、なんか「親子」に見えなかったし……って、演技レベルを下げろって言ってるみたいだな……なんて難しい要求……ごめんなさい。


 今期の「宝石の国」では主役のフォスフォフィライトを演じてます。これも現実離れした作品で、登場人物?は人外?だし、要求されるのは「リアル系」とは違う。特に作品序盤では、世界観、設定、状況、関係性などを説明することを兼用した、わざとらしい会話がけっこうある。リアルではしないであろう、このどうしたって不自然な台詞をどうにか自然にやろうとして、なんかヘンになってる部分があるかな、とは思った。作品後半になってくると、説明的台詞も不要になるし、お話の雰囲気も変わってきてね。良くなってます。と思います。

land-of-the-lustrous.com


 「宝石の国」非常に良いです。久々のヒットです。私にとってはユーフォ①以来の傑作。何となくガンダムのサンダーボルトに似てるか。もうすぐ終わりだけど終わる気がしないしいずれ二期があるパターンなのかな。超おすすめです。