忘れられた常識

お師匠さんたちの新刊ラッシュ、なので前回に引き続きご紹介。

グローバリズム その先の悲劇に備えよ (集英社新書)

グローバリズム その先の悲劇に備えよ (集英社新書)

中野剛志さん、柴山桂太さんの対談本。実は以前にも同じテーマで対談本を出している。

グローバル恐慌の真相 (集英社新書)

グローバル恐慌の真相 (集英社新書)


 5年半たった現在はどうなったか。「保守論壇」のお花畑全開のヤツらに読ませたい。まー、あいつらに何言っても無駄だ、という気もしてしまうが。でも言い続けねばならんのだろう。だからこの本を出版したのだろう。馬渕睦夫さんとか古森義久さんとか関岡英之さんとか。特に関岡さんは(いくらか)若いんだし頼りになりそうだし、もっと、中野さんたちのような若い人(と言っても四十代だけれど)の意見を聞くべき、と思ってしまう。馬渕さんなんて最近ちょっといくらなんでもご都合主義のお花畑が過ぎるのではないか。小森さんはアメリカ出羽守だし。アレで日本人?保守??話にならん。あーいう「自称保守」とか「極右」とか「アメリカ出羽守」などの「保守論者」を見てるとあきれ果ててしまって、水島総さんはまだマトモな方なんじゃないか、と思ってしまうのですがいかがなもんでしょう。
 
 以前より何となく中野さんがおとなしい印象かな。気のせいかな。いやしかし、柴山さんて本当に常識的なことしか言わないな。この、常識が薄れて消えかけた今の時代には貴重な存在。柴山さんは本当に丁寧で分かりやすい。

 以前からこのお二人の論説を追ってきた人には普通の話が多いかもしれないが。新しい事象としての、トランプ大統領やBrexitポピュリズムの考え方など、変わりつつある世界を読み解く必見の書。トランプ大統領のマズさは私もいっぺんちゃんと書いておきたいな。


 普段から中野さんがやっている経済・政治・歴史・思想の話ではなく、企業とか経営とかについて真説を展開。なんか新しい。まず、ですます調で書かれているのが新しい。対談本以外では初めて見た気がする。その表面的に丁寧な「言葉遣い」をあえて皮肉っぽく利用しているところがあって面白い。どこか東田剛氏を思わせるような部分もあって、ひとまずファンは必見である。

 経営論やイノベーション論などをパラダイムから考え直す。「そのパラダイムおかしくね?」というところからスタートするという、中野さんらしい企業論。これまたなんとも常識的な話へと収束していく。常識をぶちこわしてしまって当たり前のことができなくなってしまった、そんな時代であることを痛感する。これは中野ファンよりも、中小含めて企業経営者や、或いは今後起業したいとかいう若造にぜひ読んで欲しい。パラダイムシフトの重要性に気付いて欲しい。安倍ドリルはどこまで日本を破壊すれば気が済むのだ。
 
 さてこの本、笑ってしまったところがいくつもあるんですけれど、特に「出羽守(ではのかみ)」の話がね。「アメリカでは~」「ヨーロッパでは~」とか外国の事例を持ち出して「~では」とか語り出す人を「出羽守」なんていう、スラングを聞いたことある人も多いと思いますが。はてなにもよくいるよね。

「アメリカ出羽守元官僚」って岸博幸さんですよねわかります中野さんの大先輩の。



 佐藤健志さんと藤井聡さんの「対論」。いわゆる対談本とはちょっと違って、まずはそれぞれ「炎上」についての分析を独自に行って論説を展開しており、その後に対談、という形式。7章構成で、

① 1,3,5章が藤井さん
② 2,4,6章が佐藤さん
③ 7章が二人の「対談」

となっている。文量は3:3:4くらい。
帯に小泉、橋下、小池の、「劇場型」政治家三名の顔が。


 まず藤井さんのところ。近年におけるネット炎上の話題から大阪都構想の炎上騒ぎ、豊洲移転問題やオリンピック関連、東京の炎上騒ぎ。大阪も東京も、藤井さんはTV番組やらネットメディアやらメルマガやら雑誌寄稿やらで、徹底的に言論戦を展開していたので、その実体験をベースに書かれています。
 
 佐藤さんの方は演劇の話。「小泉劇場」「橋下劇場」「小池劇場」など、近頃の「劇場型政治」とはいったい何なのか、を読み解くに当たって実際の演劇、フランスの劇作家ジャン・アヌイの作品「アンチゴーヌ」を元に論説を展開。


 1~6章まではお二人は別の話をしている。ので、一章ずつじっくり読んでいれば特に気にならないと思いますが、一気に読むと違和感があります。いやしかし、藤井さんの「炎上をドライブする話」はなんだか気が滅入る。「大阪都構想」も「豊洲移転」も実際にこのブログでもやってきた件なので、これは詳細にやりたいとも思うのですが、最近ちょっと時間とやる気が足りないんだよな。
 
 佐藤さんの話は相変わらず面白い。今回は少々ややこしい感じも。一回読んだだけだとイマイチなんか読みこぼしている気がする。もういっぺん読もう。


 本の話からはズレるけれど、佐藤さんは独特なのはその態度に由来するのかなあ。保守系の論者って基本的にはまず、怒り、悲しみ、諦念があって、今回紹介した著者四人のうち佐藤さん以外は明らかにそうなのですが。同じ保守系論者でありながら佐藤さんはいつも楽しそうな感じだなあ。ちょっと不思議。