地政経済学序説

 久々に中野剛志さんの新刊。地政経済学序説。


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 kindle版にするかとても迷ったが紙の本を買ってしまった。販促イベントとかがあればサイン貰えるんではなかろうか、などと思ってしまい。税込で¥3,888もするが、装丁を見ると安いよな、とは思う。


 これ先日「出版記念講演会」というのが市ヶ谷であって、行ってきました。しかし中野さんとお話するようなきっかけもなく勇気もなく。残念ながらサインはもらえなかった。まあ、アイドルじゃあるまいし、仕方ないのか。ちなみに参加者は七十余名でした。


 (私にとっては)やっかいなことに、facebook内でのユーザー同士のイベントだったので参加ハードルが高かった。一応、訳あって以前にアカウントは取っていたものの。三日くらいで凍結して全く使っていない。なので使い方もほぼ分からない。友達一人もいないぜ!!


 facebookって私にとっては場違いな気がしていて。ポリシー的にもなんかちょっと合わないというか、無理なんだよな。私としては、なてなで見知った(ような気になっている)気の合う(ような気がする)ヤツらと、哲学談義やらパラダイム理論やら小説やら映画読書アニメ漫画感想やら、お互い勝手に好きなタイミングで、見せっこして戯れているのが性に合っているのです。安心するのです。

 個人ブログってそれぞれが勝手に一人で書いているんですが、でも直接リンクなくとも、よく見てると意外とブログ同士でハイコンテクストなやりとりをしているのが垣間見えることがあります。それがいいのよ。

……話を戻しましょう。


 でまあ、仕方ないので一時的にfacebookアカウント復活させて参加を申し込んだと。講演会のあとには懇親会があって、そっちに参加すればちょっとくらいはお話することもできたのかもしれないのですが……知らん人同士で飲み会とか、しかもそれに一人で乗り込むとか(私にとっては)あまりにハードルが高くて越えられなかった。下戸だし。



では本の話。
……実はまだちょっとしか読んでない。ので内容のご紹介や感想はまた後日。っていうかね、ここ数年で中野剛志さんと佐伯啓思さんの本をよく読んでいるのですけれど、一回読んだだけだと意外とよく分かってないのですよ。もう一回読んでみると意外と分かっていなかった、ということが事が分かるという。すぐじゃなくていいので、三回は通読する必要がある気がしている。このお二人の本は大概は二回、気に入った本だと3~4回読んでいます。
 
 ちなみにお二人とも保守主義の系譜のお方で、歴史・古典を読み解きつつ論説を展開する、というスタイルですが、著書の内容はかなり異なります。中野さんは現役の官僚ということもあってか、政治経済外交安保のパラダイムレベルの問題指摘、パラダイムシフトの重要性、対応する政策論など。行政や公共政策へと結びついていく。対して佐伯さんはフィロソフィカルな話がメインで、最終的には個々の「日本人」がどうしたらいいのか、というようなメッセージになっている。大学教授として学生を教育する立場だったから、というのがあるのかな。


 私は元々、社会科が好きだったので、歴史、外交、安保、政治には昔から興味があり、本もよく読んでいましたが、経済だけはやってなかった。なんか社会とはちょっと別な科目な気がしていて、全く手つかずでした。なんかどっちかっていうと数学寄りな気がするじゃん。

 なんで経済学を始めたかって2009年の政権交代の時に、いよいよ本格的に日本がヤバイことになってきたぞ、と思って、ようやく重い腰を上げて取り組み始めた、という感じ。


 それで、だんだん分かってきたのです。政治とは、本当は経済のことなのだと。歴史も外交も安保も、みんな経済なんだと。う~ん、「経済」という言葉では語弊があるのか。「経世済民」ということで、政治から独立して「自由経済」が存在する、なんてのは本来有り得ない、っていうか本末転倒なんだ、ということです。それをなんと政治家が分かっていないという事が分かってくる。なんというか、そういう意味で私が中野剛志さんの論説にたどり着いたのは必然だったのだ、という気がします。


そしてさらに「地政学」までをも統合して「経世済民」として検討する、というのはなかなか魅力的なアイデア



 講演会の前半では「地政経済学」を考えるようになった、いきさつの話でした。大元は大学の研究で最初に読んだロバート・ギルピンの本にあったとのこと。ギルピンの論文と言えば「無双!中野学校」のラスト前くらいの授業で、動画配信のあった回に出てきてたね。生徒さん覚えてますか!?著書の方にも出てきてたような気がする(うろ覚え……)。ギルピンは伊藤貫さんも「地政学」と「経済学」を統合連携して現状分析している凄い奴だ!と絶賛していました。

 後半では、アメリカ大統領の話とか、今後の日本についてとか。相変わらず絶望的な話ばかりだ。あえて一つ、無理矢理に希望が持てる点を上げるとするなら。そもそも80年代までの日本の発展は地政経済的にラッキーだっただけであって、日本人の実力ではない。ので、現在の日本の低迷も日本人の実力ではない。ので、そんなに気にすることないんじゃないの、だそうです。あともう一つ悲しいお話、「例えば日本の帝国陸軍がマヌケだったなんて今の時代の人間がバカにするのは簡単ですけど。そんなのは私たちだって同じ事で。五十年後の日本人から、平成の日本人ほどバカな連中はいないぜ。って言われることになるんですよ」みたいな。確かにこの間の鳩山や菅にしろ、黒田や岩田や浜田にしろ。この辺の話は近日中に佐藤健志さんの本が出るようなので、そちらの方でやってみましょう。


 最後は質疑応答。あ-せっかく話を聞くチャンスなのに!全然思いつかない。しまったあらかじめ考えてくれば良かった。あーなんかあるかな、最近の話題……例えば、小池のキチガイっぷりをどう思うかとか……そんなのわざわざ中野さんに解説してもらうほどのもんじゃないな……じゃあ……これだ!「本のカバーにある人魂みたいなのは何ですか?」……いやそれはどうよ……じゃあ「これから僕はブログに何を書いたらいいんでしょう?」とか……?


 トンチンカンな質問しか思い浮かばない。やがて質疑応答は終わり、司会進行の方が「では、講演会のみ参加の方はここで退室してください。懇親会参加の方はこのまま残ってください」とのアナウンス。あー、やっぱり懇親会に参加しないとお近づきになれないんだなあ……という顛末。


 会場を出て曙橋駅への道を歩いていたら、質問を思いついた。

「無双!中野学校の再開はいつ頃になりそうでしょうか?」


それもどうなんだ……?まあいいや。機会があったら聞いてみましょう。


富国と強兵

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