パラダイムレベルの話をしよう

いきなりですが先日(ゴジラ一回目で)紹介した動画。思い出してください。


www.youtube.com
(これの11分あたりから)

 ワシントン在住30年という伊藤貫さんの仰っていた、議論には3つのPがあるっていう話。3P理論、思い出しましたか?
 
① Philosophical Level (哲学・思想)
② Paradigm Level (規範・学派・論理的枠組み)
③ Policy Level (個別の分析、具体論、政策など)


 日本人の議論下手の理由について伊藤さんの曰く、日本人は③の、特に細かいポリシーレベルの話が大好き!でも①や②が無い人が多い。パラダイムの話をしても意味が分からずに興味を失ってしまう、っていう。

それだ!ウチのブログ人気ない理由。え、それだけじゃない?なん…だと……


 ブログやツイッターなんか見てると、私の印象では③ ポリシーレベルよりさらに以前の、問題提起の段階で満足していたり殴り合っていたり、のケースもかなり多いような。差別は許さない!私は正しい!逆らう奴は殴る!議論も異論も許さない!
 
 で、これまた私の印象では、ウチのブログを面白がって読んでいるような意識の高い(笑)な人達、おっと失礼、物好きな……いえ、奇特な人達なら、この議論レベルとしての①②③はご存じのことと思う。ウチでは主に②を中心に、③に振ったり再構築したり、時には①に振ったり。特に①の話をすると喜ばれる気がして一所懸命書いたりしてみるのだが、正直あんまりうまくないよね俺。ごめんね。あんまり書けないんだ。

岡田斗司夫さんも思考訓練として、パラダイムから考え直すとかパラダイムシフトを想定するとかを推奨してたね。てな訳で、「パラダイム」を意識しよう!


では例題その1

日本の財政破綻

 日本は「借金し過ぎ」なので、遠からず「財政破綻」する、てのは大昔からよく言われている。1996年の橋本政権の頃は21世紀まで持たないって言われてた。だから消費税を3→5%にした。そしたらデフレに突入、財政のいわゆる「プライマリーバランス(以下PB)」問題はますます酷くなった。「財政健全化」のために増税すると「経済不健全化」して、ますますおかしな事になる。なぜだろう。

 財務省の言い分は「増税しても、その分は国家予算として全て使ってしまうんだから、カネの流れ方が変わるだけで、マクロレベルでカネの流通量は変わらない。国民の可処分所得は減るが、その分国家の支出が増えるんだから、増税で不景気になることは無い」という。この言い分は(一応)正しい。増税しても、他の要素がいっさい変わらなければ、理論上、経済規模は変わらないはずだ。


 しかし財務省はウソをついている。実のところ、増税した分、赤字国債は減らしたい、というのが本音。できるだけ「借金」しないようにしたい。そのための増税なのだ。PBをゼロに近付けたいのだから。てな訳で、例えば、税収が5兆円増えたのなら赤字国債も5兆円減らすのが原則。


これだと増税した分、経済縮小するよね。


政府支出増税+5兆、赤字国債-5兆 なので±0
民間支出:増税-5兆


 てなわけで、この例だと5兆円分経済縮小する。そもそも日本は赤字国債なしでは成り立たないのだ。ここ20年ほど、日本は「1~2%/年」程度の縮小均衡状態にある。なので行政府がGDP比1~2%(5~10兆円)くらい借金すると、0%均衡(名目で)する程度の経済実力なのだ。日本に流通するカネが年1~2%減るので、減った分を政府が流してる。減った分は企業の内部留保・株主還元、個人の預金や生保・健保などにいく。で、そのカネで銀行や生保が赤字国債を買う、みたいな。そういう無限ループというか無間地獄というか、均衡状態にある。



 「パラダイムレベル」という程の話でもなかったけれど。色々と端折って簡略化しているが、基本的にはこうなっている。まあよく、マスコミやら竹中さんの言ってる「借金やめろ、赤字国債はダメだ。PBゼロにすべき」という話よりは、とっても複雑だけれど。でもそんなに難しい話ではなかったでしょ。この程度の複雑さにすら耐えられない人があまりにも多い。本当に、いったいなぜ増税した方がいいと思うのか、よく考えた方がいい。

私も決して、増税は絶対ダメだ、と思っているわけではない。


① 福祉充実のためには150兆円の国家予算が必要だ
② 財政健全化のためにPBをゼロにしなければならない
③ 借金が膨らむと日本経済が破綻する


 ①はとにかくカネが必要だって話なので、それはまあ分かる。②は「財政健全化」のために「経済不健全化」させるってのはどうなの。上で書いたように、確実に悪化するのはもう何度も経験してきた。理論的にも当たり前のことだ。③もね。今の日本は借金することで経済を持たせている状態なので。借金やめる方が破綻への近道だ。まあ、一度破綻させた方がいい、というならそれも有りか。その話は別途やりましょう。っていうか「日本経済が破綻」てのはどういう状態なのよ?トヨタJR東日本やNTTドコモが倒産するのか?(適当)

 破綻論者は、例えば「株式・通貨・債券のトリプル安」とか言ってるけどさ。そうやって「日本経済が破綻する!」と、具体的にオレ達はどういう状態になると思ってる?仕事や生活はどうなるの?

まとめ

 いわゆる「国の借金」問題で政府叩きをするのは大いに間違っている。そういう問題じゃない。そもそも日本経済がマイナス均衡で20年やってきてるのが「問題」なので。政府がPBを赤字にすることで、日本経済はなんとか続いている。日本経済が+2~3%均衡するならばPBは勝手にゼロになる。PBは「財政」ではなく「経済」の問題なのだ。なので「財政」で直接「PBゼロ」を目指すのは絶対ダメ。そういう問題じゃないから。

 これそんな単純な話でもないし、もうしばらく経済パラダイムレベルの話を続けてみようかと思っています。経済破綻とか経済均衡とか。でも、しばらく更新頻度は低い予定です。今月はもう一回書きたいところ。本質的な問題はどこにあるのかって、決して「マイナス均衡」では無いと思っている。



※ 奇特な読者の皆様へ。「奇特」という字を使うに当たって一応辞書で調べたら思ってたのと違った。ジャンプ放送局の「奇特人間大賞」のせいだな。私の他にもいるはずだぞ。



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