田母神事件の省察(前編)

 2014年の東京都知事選において公職選挙法違反があったという容疑で今年の4月14日に田母神俊雄氏が逮捕された件をやります。なんで2年以上も経ってから逮捕されたのか。公職選挙法違反の捜査っつーのは選挙期間中・後に行われ、選挙後間もなく逮捕者が出るのが普通だというのに。


※ 主な登場人物とあらすじ

田母神 俊雄:元航空自衛隊幕僚長。2014年の東京都知事候補者。
② 水島 総(みずしまさとる):田母神氏を都知事候補に担ぎ上げた張本人。選挙対策本部長。チャンネル桜代表。
③ 島本順光(しまもとのぶてる):元航空自衛隊 選挙及び田母神事務所の事務局長
④ 鈴木 新:元航空自衛隊 選挙及び田母神事務所の会計責任者
 
水島さんが都知事選の発起人。実質的に選挙活動を仕切っていた。田母神さんが島本さんと鈴木さんを連れてきた。二人とも元航空自衛隊所属で田母神さんの僚友。田母神さんが二人を事務局長と会計責任者に任命した。

 都知事選後一年くらい経ってから週刊文春に「田母神は選挙違反ではないか」というスクープが出た。このスクープには水島氏が咬んでいるようで、これを機に水島氏が「田母神はけしからん!」と言い出し、東京地検田母神事務所を告発したのが発端。

あらすじここまで(以下敬称略)


 珍しく政治の話題。私の扱っている話題の中では最も苦手とする分野だ。高度なユーモアのセンスを要求されるから、というのは前回記事に書いたとおりである。

 で、こちらの記事。私も田母神事件を取り上げよう、とはずっと思っていたのだが時機を逸してしまった。


bousouwakoudo.hatenablog.com


 これは、ある程度「誰か達」を意識、想定したメッセージなのだろうか。


 「国策捜査」ということは、この事件は「為政者」の「陰謀・謀略」という主張と見なしてよろしいか。つまり安倍、菅、世耕、山本一太あたりから何かそれっぽい発言があったのだろうか。しかしタイトルとは裏腹に記事中には「国策捜査」の話がない。「陰謀」だから証拠が残らないのだろうか。

で、記事の結びでは「喜ぶのは誰なのか考えてほしい」とある。


 喜ぶのは陰謀を企てた輩に決まっている。つまりアベやスガが得する構造になっているはずだ。しかし、本記事ではそういう筋立てにはなっていないな。いったいどういうことだ。


 正直に所見を述べよう。記事を読むと島本が小沢に近いから、という理由だけで無罪だと擁護しているようにしか見えない。確たる証拠を示せないと説得力がない。これでは田母神の選挙違反を擁護することにもなりかねない。

 もし仲間に間違ったことをした輩がいたならば、それをかばい立てするのは正しいだろうか。仁義としては正しい場合もあるかもしれないが、法的には正しくはなかろう。本当に無罪なのかよく見極めてほしい。慎重な発言を心掛けてほしい。言葉の軽さは政治家にとっては致命的だ。発信力を失う。


 だいたいなにより主役である田母神のことが全く書いてないじゃないか。島本が無罪なら田母神も無罪なのか。それとも安倍に近いから有罪なのか。鈴木はどうなんだ。無罪なのか。それとも田母神の言うように鈴木だけが悪いのか。


 水島はどうだ。本件を告発したのは水島だ。水島が安倍の指令で田母神を潰しにかかったということなのか。しかし、水島は都知事選では自民党を支持せず、安倍に敵対して田母神を担ぎ上げたのだぞ。水島が安倍の手先だとかいうことは考えにくいだろう。私はそんな人ではないと思っているよ。


つまり君の話はどうも筋が通っていないので、もう一度よく考えてほしいということだ。

本件における陰謀論について

 確かにネット上にはくだらない陰謀論が転がっている。島本は在日やら韓国やら北朝やらのスパイだとかいうの。

 そんな馬鹿な話があるか!と擁護したくなるのも分からんではないがしかし、これは朝鮮の陰謀じゃなくてアベやスガの陰謀なのだ!というのも相当に説得力を感じない。本当にそう思っているなら根拠を示すべきだ。「陰謀」だから証拠が残らないのか。超便利で万能な陰謀論。陰謀などあって当たり前な上に万能過ぎる。陰謀さえあれば何でもかんでも全ての問題が解決する。ゆえに言葉が軽くなって信頼を失う。とにかく陰謀論に与しては絶対にダメだ。少なくとも文字に残すのは絶対にやめた方がいい。賛嘆若人さんは万年野党の政治ごっこだけで終わって欲しくないのである。


 私は島本が在日や北朝に絡め取られていた可能性はあると思う。いずれにせよ相当に脇が甘い。島本サイドに逆スパイ的戦略があった可能性も皆無ではないが(皆無に近いだろうが)。結局は大した問題はなかった可能性が高いだろうが、そんなことは知らん。どうでもいい。こんな下らない話は論ずるに値しない。工作はあって当たり前だからだ。こんな当たり前の話の断片だけ都合よく切り取っていちいち「韓国がー在日がー」とかしたり顔で激昂ヘイトしているネトウヨどもは全く何も分かっちゃいないので気にする必要はない。あんな者らは「保守」でもないし君の仲間でもないはずだ。あいつらはフォースの韓国面に墜ちてしまった、韓国ネトウヨミラーリングに過ぎない。お互いになくてはならないかけがえのない共依存関係なのだ。
 
 わざわざ「便所の落書き」へ赴いて、しかもそこに書き散らかされた「落書き」ではなく、撒き散らされた「うんこ」だけを厳選したような工作員養成(マトメ)サイトを信奉しているような連中だ。保守速報とかニュースUSとか。
 
もう彼らを救い出すのは困難だ。並大抵のことではない。諦めた方が良いかもしれない。

言葉の軽さ

 少々厳しめに書いてしまったが「言葉の重さ」については本当に気をつけて欲しい。今の政治家の言葉は本当に軽い。いったいいつからなんだってのは小泉から。与党が無責任になった。野党化してしまった。それ以前とは明らかに変わった。①過激なフレーズ、②叩きやすい敵、③簡単な答え。この3つさえ提示すれば何を言っても構わないことになってしまった。

自民党をぶっ壊す
抵抗勢力
③ 痛みを伴う改革

だな。これを踏襲したのが鳩山。

政権交代
② 古い自民がー
③ 政治主導

大阪の橋下も完全に小泉の手法を踏襲している小泉の劣化コピーに過ぎない。まあ、今は大阪の話はやめておこう。


 この間の「日本死ね」も過激発言で衆目を集めたが。お気軽な言論テロ手法だ。ローコストで効果的。まあアレも結局、国会ではガソリンが地球5周分だとか、そっちは7周じゃないかとか、下らない議論になっていた。あんな手法しか取れないようでは日本はもう衰退していくしかないだろう。あの増田にしてこの国会。この国民にしてあの議員。いずれも日本に相応しい議論だった。日本国民が国会議員を批難するのも違和感ありありの筋違いだ。


 若手の方々までもが過激発言やいい加減な答えを連呼して叩きやすい敵を叩き、国民を扇動するようなことになっては本当に世も末なので、小泉・鳩山・菅・野田・安倍・橋下なんて連中は絶対に見習ってはいけない。あんなうんこどもは反面教師として欲しいのである。


※ 結局、田母神事件の話はあまり書けなかったので、気が向いたらそのうちまたやります。