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ハイエクの誤算

保守思想

これの続き。ここで紹介したハイエクの「隷従への道」解説本を(一応)一通り読みました。

fnoithunder.hatenablog.com


まず謝罪。間違いがありました。
2008年に出版されたと書きました。確かにそうだったんですが1999年に出版した本を新書で再出版したものでした。ゆえに内容が少々古いのは仕方がないようです。元のタイトルは「ハイエクマルクス主義を殺した哲人」で、内容は全く同じだそうです。


ハイエク―マルクス主義を殺した哲人

ハイエク―マルクス主義を殺した哲人


 上の記事でも書いたとおり、読み始めは「あれ?」という印象。確かに読みやすく分かりやすいものの、一章を読んだ限りでは大したことないなと。その後を読み進めても印象は変わらず。これがかの有名な現代自由主義の始祖、ハイエクの「隷従への道」なのか?なんか期待外れだ。でも解説書とは言え「隷従への道」の章構成と全く同じなんだしアマゾンレビューでは評価高いし……

 1/4くらい読んだところで真剣に原著を当たった方がいいのか?と悩み出す。なんせ大したことない。ハイエクを買い被っていたのか?半分も読むと苦痛になってきた。どこを切っても似たようなことしか書いてないじゃないか。各章の冒頭数行読めばもう先の結論が見えてしまう。だんだん適当に読み流すようになり、2/3くらいまでは何とか我慢して読んだが、終盤はもうマトモに読んでない。


ざっくりとした感想を。まず、読む前に疑問点として挙げた点についての答え。

① 主流の哲学者・思想家は、全体主義とは民主主義からしか生まれない、と言っているが、ハイエクはどうなのか?

 → 民主主義は全体主義へとつながるリスクがあり危険だ、という点では同じ。その解決策として民主主義より自由主義が大事なのだ、との主張。とにかく自由が最優先。

アーレントの「凡庸なる悪」やオルテガの「大衆の反逆」のような話も出てきました。でも主従関係は逆のよう。オルテガだと、全体主義の発生はボトムアップ的であって大衆と為政者との共犯関係へと行き着く。大衆が「主」で、為政者が「従」。最終的には逆転し破滅していく。おおさかのことかーっ!


ハイエクでは、明確に「悪の政府」がまず先にあって =「社会主義思想」が悪の主体であると。社会主義によるトップダウン構造が全体主義へと繋がる。

フランス革命の評価
 あまり記述がなかった。ハイエク自身は肯定派では無いような印象は持った。著者の渡部昇一氏とは考えが異なるのかも知れない。渡部氏は否定派ではなさそうにも思えた。

③ バークとハイエクの思想は近いのか
 バークは保守主義ハイエク自由主義。全然違う。「同系統」と主張する人がいるなんてワケが分からないよ。そういう人はまともにバークを読んでないんじゃないかと思った。ハイエクが保守とかご本人に失礼だろ。

結果的には似てくる部分もあるけれど根本は全然違う。無理矢理共通点を見つけては同じ「保守」と言っている印象。ちき★りんが保守だと言うようなもん。前回私が書いた「ゲマインシャフト」を重んじている、というのはほとんど出て来なかった。

まとめ

 読む前に思っていたのとは全然違った。名著との印象は皆無。納得がいかない。買い被りだったのか。

 とりあえずしかしだ。最近の自由主義系論者の言っていることと差異が少ないのも確か。浜田幸一氏、日下公人氏、松尾匡氏、上念司氏、倉山満氏、竹中平蔵氏、岸博幸氏、岩田規久男氏あたり。ミルトン・フリードマンとも大差ない。マーガレット・サッチャーとも小泉純一郎とも安倍晋三とも大差ない。現代自由主義の始祖がハイエクだと言うわけだから、皆その教えに従っているだけ。とすれば、きっとこの通りなんだろう。……ということで、原著に当たる必要はないか、とも思いました。


いやしかし……根本的な疑問が解明されていない。

① なぜ「ハイエクフリードマンとは違う」と言ってかばう人がいるんだろう。特にリーマンショック後の不況・混乱ではフリードマンだけが悪者扱い。でもハイエクだって似たようなもんだろ。違いが分からない。小泉と安倍くらいの違い。信者にしか違いが分からない、みたいな。哀れなりフリードマン。でも、確か佐伯啓思氏も言ってるんだよな。なぜだ?これは佐伯氏の本で確認しよう。

② なぜバークとハイエクは同じ、と言う人がいるんだろう。全く分からない。
  なぜハイエクを保守という人がいるんだろう。全く分からない。


困った。どうしよう。なぜこんなことに。


その謎を解く鍵を発見。上で紹介した、1999年に書かれた方。内容は全く同じってやつ。


ハイエク―マルクス主義を殺した哲人

ハイエク―マルクス主義を殺した哲人


アマゾンレビューの評価がとても低い。8件のうち、酷評が3件も。「こんなのハイエクじゃない!笑わせんな」という人も。妙に納得してしまった。新書版と全く同じ内容なのに、なんでこうも違うの?池田ノビーさんの方がよかったかな。


やはりこちらを読んだ方がいいのか。


隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】

隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】


 原著の翻訳版。これの訳者、西山千明氏は、ハイエクの弟子で、実際にシカゴ大学で経済を学んだ人。上の渡部氏の本について「ハイエクを誤解している。渡部氏は分かってない」と批判しているようだ。ただ、ここの「隷従への道」のアマゾンレビューを読む限りでは、渡部氏の本もそんなに外れてはいないとは思った。


これからハイエクを知りたいという人には、この渡部さんの本はあまりオススメ出来ないかも。評価は保留です。やはりレビューだけではよくわからんです。ハイエク思想の評価は保留にします。なんか面倒になってきたが、必ずやリベンジせねば。


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