カットスリック 反省回

 ヤマハのエース、じゃなくって、単なるおっさんライダー、ふのい倉津浦です。
 
先般の短編小説は、強豪ひしめく中、なんと、頑張ったで賞(次点)を受賞?しました!!ありがとうございました。

fnoithunder.hatenablog.com


なので、需要があるのか分かりませんが、調子に乗って振り返り記事を書いてみます。なにか創作のヒントなどお役に立てればいいのですが。(感想記事ではないので、リンクの張り方が違う、とかありましたらお知らせ下さい)


novelcluster.hatenablog.jp


 ああそうだ、ちなみに、短編小説は初めて書いたのですが、長編小説は中途半端に書きかけたりしています。ので、ド素人とは言え、全く小説を書いたことがない、というわけではありませんです。


私の場合、構想着手から完成まで、丸一週間かかっています。一日あたりの執筆時間は1.5~2 Hrくらい。

初日(月曜)はプロットとキャラクタ設定表のみ。文章は全く思いつかず。火~金まで作文しつつ、同時に推稿。とにかく日頃は情景にしろ心情にしろ描写ってのをロクにをやったことがないので、ちっとも進まない。どう書いていいのか分からず、すぐに止まってしまう。仕方ないので暫定で適当に書き、とりあえず先に進む。また戻る。見直す、書き直す。そんなんの繰り返し。すぐに疲れてしまって集中力が続かない。普段のブログ記事は結構簡単に、いくらでも書ける感じなのに。いやあ苦しかった。


情景描写に凝ったところはあまりなく、全体的に地味で説明的、心情描写もたいして書いてない。慣れないものを無理に書いても却っておかしくなるか、と思い、あまり凝った書き方はせず、「描写の巧みさ」はある程度あきらめていて、物語の「推進力」を意識しています。絶えず微妙に説明不足な感じにすることで読者の興味を引き、話を進めよう、というような。
 
金曜日にはほぼ完成、気分転換に「小説を書こう」の前振り記事を書いたりしています。
 
土日も多少見直してみたものの、何度も読み過ぎて完全にゲシュタルト崩壊状態。面白いのか分かりやすいのか、全く分からなくなってしまいました。そんな中、なんだか書き急いでいて読者がついてこれないんじゃないか、というような思いに囚われ、変に間を取ろうとしてしまい、副詞や説明文を追加しています。元々描写が弱かったのに。コメント欄でShizuka Ritsu (id:shizukado) さんが指摘されていたとおりだと思います……ハイ。


人物と設定

新堂

モデルになっている人物は伊藤真一選手。レースは2007年の世界GP第15戦、ツインリンクもてぎサーキット。実際に現地へ行き、観戦していました。

 伊藤選手は当時40歳。スポット参戦で、本当に久しぶりの世界戦でした。スタート時は雨でしたが、徐々に晴れていき、彼は素晴らしい追い上げを見せてくれました。しかし終盤、もう少しで表彰台に届くかというところで転倒。ダメージは少なく、再スタートできたものの結果は15位。結局、彼の世界GP参戦はこれが最後となりました。

 作中のサーキットが鈴鹿になっているのは知名度や語感のよさ。「もてぎ」はなんかイマイチ……(栃木の人すみません)

 設定ではフルネームは「新堂幸太」で、当初、理恵は「幸太」と呼んでいたのですが、短編ということもあり「新堂」に統一した方が読みやすいか、と考え直し、名前を呼ぶところは削除、或いは「あなた」に書き換えました。
 
 掲載写真は、伊藤真一選手が雨の鈴鹿を走っているという、完璧なものを発見。しかもなんと「ご自由にお使い下さい」というとてもありがたいサイト。ありがとうございました。


f:id:fnoithunder:20150627002214j:plain
マーガレットクラブさんより

チーフメカニック

設定表には「次原」と名前があるのですが、最初しか出てこないことになったので「名無し」に変更。他にはベテランライダーの「ワイン・ガードナー」とディフェンディングチャンピオンの「コーク・バリントン」の設定がありましたが、尺を考えて出番は一切無くしました。

理恵

 おそらく旧姓は釘宮。登場時には何者か説明せず、読者に「誰なの?」と思わせようとしています。元はレースクイーンであり、新堂の妻であり、二人の間には子供もいる、とまあ、そういう具合に徐々に明かしていく、という、興味を引くためのささやかな作戦。

 キャラ設定に頼ってしまった感じ。彼女を説明するために回想の描写がありますが、短編で時間軸を無闇に移動させるのは、うまくやらないと読者を混乱させやすいしテクニック的にも難しく、あんまりよくない気もしていて。キャラに頼らず、こういう設定の説明なしで描き切れたらいいのにな、とも思いました。

 書き上げてから思ったのが、某poko何とかさんみたいな人が見たら「こんな、男に媚びるだけ、自立心のかけらもないテンプレ通りのクソ女はセクハラオヤジの妄想の産物、まるでリアリティ無し、ムカツク」とか思われないだろうか、などと、心配になった。

加藤大輔

 脇役であるはずの彼だけがフルネームで登場。これはかなり迷いました。「若造」感を出したい、理恵がムリヤリ見下そうとしている感じにしたい、ので名前で呼ばせたい、といったところ。
これ、目論見としては成功しているのか、違和感あるのか、よく分からない。教えて下さい。話し方も「~ッス」とかわざとらしくいかにも若造なのはご愛敬。
 
 モデルは加藤大治郎選手。2001年、25歳でGP250クラス世界チャンピオンを獲得。おっとりした、優しい感じの人でした。
2003年4月、世界GP開幕戦の鈴鹿でレース中の事故により意識不明の重体、そのまま目を覚ますことなく、二週間後、妻と幼子を残し夭折されました。26歳。

 誠に僭越なことなのですが、ラストシーンは加藤選手のことが念頭にあります。


f:id:fnoithunder:20070511182706j:plain
壁紙Link 「加藤大治郎(ホンダRC211V) Daijiro Kato, Honda RC211V」より


「つくりばなし」について

 主催者さんが、純粋な「つくりばなし」を期待している、の件について思ったことを。今回の話は、実際に私がサーキットで見たことやTV中継で見たこと、バイク雑誌などで見たこと、まあざっくり7割くらい、実際にあったことがモチーフになっていて、それを切り貼り・脚色・再構築することで「物語」になっています。ので、書き手的には純粋な「つくりばなし」でもないのですが、読み手からすると「つくりばなし」に見えると思います。

 よっぽどバイクレースに詳しい人が読んだとしても「これは伊藤真一だ」とは思わないのではないかと。「雨のレースではありがちだよね。ああ、言われてみれば、なんか分かる気がする」程度かと。加藤の方は名前がアレなんでバレますけど、あくまで「名前」だけです。事実とはあまり関係がない。


というわけで今回は「つくりばなし」に見えても裏にはこんな事実がありましたよ、というようなことも紹介してみました。

小説では事実よりも真実を描くのが大事ですよね。


なんちゃってちゃって。

以上です。


※)追記 純粋な「つくりばなし」の件。

 すみません、なんか説明不足みたいでしたので、補足します。今回の参加作品の中で、自分の過去の体験をほぼそのまま書いた、とか、旅行に行った時のエッセイ、のような感じで、小説としてはどうなのよ?というような作品がいくつかあったので、そこら辺について「自分自身の体験が元になっていてもかまわないけれど、ちゃんと『小説』として書いて欲しい」というようなことで、あえて「つくりばなし」という言葉で強調されていた、ということです。誤解がありましたら失礼いたしました。



伊藤真一 PHOTO STORY 極限を生きたレーシングライダー真実の記録

伊藤真一 PHOTO STORY 極限を生きたレーシングライダー真実の記録



最後は調子に乗っててめえの写真

f:id:fnoithunder:20150714004815j:plain
        頑張るふのい倉津浦 & YAMAHA XJR1300