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曾野綾子氏に関する議論で抜け落ちているもの その1

 さてさて、なんとも今さら感のあるこの話題。
(みんな知ってると思うので、特に何もリンクしませんけど)
移民がどうとか差別がどうとかアパルトヘイトとか介護をなめんなとか。

論じ尽くされて、もう話すことなどないか、と思いきや、「はてな」では、まるっと抜け落ちている議論がある気がしてならないのです。二つも!だ。誰も論じていない気がする。なぜだろう?俺がおかしいのだろうか?読みが足りなかったのかな。
 
ので今回はまず、一つ目を書いてみます。

少子高齢化が進むとどうなる?

 日本は今、少子高齢化により生産年齢人口が減少していく一方となっている。今後日本の労働力は慢性的に不足していく。ゆえに移民が必要になる、というのが移民の議論の発端だと思う。
 
 働ける人が減っていくと、モノやサービスの供給力が落ちていく。つまりそのうち供給力不足になる。需要に対して供給が足りなければインフレになるので、インフレの方がいい、という理屈だけなら放っておけばいいのだが。

 放置を続ければいずれ供給不足が深刻になり、結構なインフレになるかもしれない。そうなれば物価は上がり、金融資産は目減りする。労働人口が減るうえに非正規雇用ばかりが増え、そして年金受給の老人ばかりになる。もう、年金制度などまともに機能しなくなっていくだろう。
 
 日本国内の供給力が落ちたら、仕方ないので外国からモノやサービスを買わなければならない。既にもう、そういうのは出始めている。モノを買うために日本円はどんどん売られて海外に出て行く。ゆえに円安もどんどん進行する。日本円での物価はさらに上がっていく。コストプッシュインフレってヤツだ。そして外国から見て、あいつら働けないじゃん、技術もないじゃん、となれば日本円の価値はさらに下がっていく。国家の信用すらも失われていくのだ。そうなったら、いよいよ外国からモノを買うことも危うくなるぞ!


 さあ大変だ。どうする?才能のあるヤツだけが働いて、多くの凡人を養なえばいい?そりゃあ無理じゃないかな。なんせ供給力が足りない。プロスポーツ選手や天才アーティスト、超敏腕プロデューサーが何億円稼ごうが、食料供給もエネルギー供給もインフラ整備も建築も運送も医療も介護も教育も国防も消防も警務も、やってくれるヤツがどんどんいなくなっていくのだ。
 
 直近の未来で必要になるのはカネじゃない。モノの方だ。ベースインフラが危うくなったら元も子もない。世界は逆を向いている。そこから遠ざかろうとしている。ケインズは死んだのだ。


そこで出てくるのが、移民ですよ。

移民で解決できるの?

 どんな人材が必要か。大概の工業製品や電子機器、衣料なんかはもう既に外国の、日本円で言えば時給数十円の超低賃金労働者にやってもらっている。日本で造る意味はない。なんだって海外の安い労働力にやってもらうのが最も生産性が高い。どうしても海外移転できないサービスだけ、仕方ないので外国人の方から日本に来てもらう、という話だ。日本はひどい財政赤字だから、インフラ整備も医療も介護も超格安でやってもらわなければならない。本当は時給数十円の労働者を、そのまんま国内に入れたい、というのが本音だ。ぶっちゃけ奴隷。社畜どころじゃない。


 日本国内で時給数十円ってのはいくらなんでも無茶だけど、でも現実に中国人の農業実習生を時給実質200円くらいで使っていた、なんて話は結構ある。パソコンやスマホなんかと違って「国産の安全な野菜」は中国生産できないからね。仕方ないから北関東で「中国生産」してたってワケだ。


必要とされているのは「天才」じゃない。「奴隷」なのだ。
いつの時代も「資本」は「奴隷」を欲している。


 金融資本主義、或いは新自由主義経済社会で求められる移民とはこういうものだ。実質「奴隷」移民でなければ、将来危惧される悪しきインフレを回避することはできない。実質奴隷の移民さえいれば資産家、老人達の金融資産は守れるし、年金制度もだましだまし延命させることができるかもしれない。


そりゃ「奴隷」は言い過ぎだけどさ。
でもきっとアルバイトばっかり。社会保険なんか用意できない。
今の日本ではもう、移民労働者に年金保険払えるほどの賃金を用意するのはムリだよ。 


 今の経済の仕組みではピケティの分析通り、起こるのは資産インフレとコストプッシュインフレばかり。資産価値のみが増大、実質的なインフレは起きない。実質賃金は国際水準を目指して下がっていく。賃金が下がった分だけ生産性が見かけ上は上がり、実質GDPは多少伸びる。名目GDPは全然伸びない。実質デフレのまま推移し、財政赤字は解消されず、拡大するばかり。


 つまり「失われた20年」を更に100年続けようってのが、今議論さている「移民政策」の本質だ。ゆるやかに100年が失われ、そして日本が失わていく。日本国内の無産階級は、100年かけて時給数十円の海外労働者と同じにならされていく。グローバリズムとは世界の均質化だ。賃金とて例外ではない。皆が豊かになるならいいのだが、日本は相対的に貧しくなる方向にしか進まない。


いったい何のための移民だったんだっけ。


まあ、今の経済の仕組みが今後もずっと続くならば、の話だけれど。


この件で重要なのは、人権とか差別の問題じゃない。全然違う。
きれい事じゃすまない話だ。

移民政策ってのは、経済の枠組みを19世紀に戻そうって話のひとつに過ぎない。


(次回は多分、対策を考える編、です)


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参考記事

(すみません、お二方、なんか違う話をしてしまって
いる気もしますが、参考ということでお許しを)

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