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日本はISIL問題の当事国か?(後編)

 前回の続き。


日本はISIL問題の当事国か? - 強靱化のすすめ


 前回書き忘れてしまったことがありました。「ISILに日本人の人質を取られたから、日本は当事国になった」というのは違います。因果関係が逆で、これは人質を取るのが有効だと判断された、というのが先にあります。


 いやしかしこの問題、国防、外交、宗教、歴史、エネルギー、原発、生活安全保障、などなど、さらに陰謀論の展開もあるし、あまりに多くの要素を含んでいて、何を書いたものやら大いに迷ってしまいました。


 しかも最近(関係ないけど)、私の巡回しているブログでは、ここ一週間ほどちきりんさんが話題になっていて、プチちきりん祭り状態。今なら言及ハードル低し!この祭りに参加したい!ってなわけで、俺の頭の中はちきりん氏のことでいっぱいだあ!


しかし、なんかもう既に乗り遅れ感が……

なんて冗談はさておき、


 え~、前回、中東問題の根底にはスンニ派とシーア派の主導権争いがある、と書きました。今起こっている問題をまとめるとこんな感じ。前回の地図も貼っておきます。
 
イラク戦争の結果、シーア派が勢力を伸ばしてきた
・2010年末頃より始まった「アラブの春」のより中東情勢が不安定化
アラブの春民主化だということでアメリカは支持
・対抗勢力としてのスンニ派過激派組織ISILの勃興

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※ 緑系がスンニ派、紫系がシーア派


 これらは親米国であるサウジアラビアイスラエル、トルコ、カタールなどにとっては非常に不本意なことになっていて、アメリカに裏切られた、もうアメリカは信用できない、という認識を持たれてしまった。


 そんなこともあってか2013年8月、アメリカは化学兵器を使用したシリアのアサド政権側(シーア派)に対して空爆を宣告しました。アメリカ議会の反対もあり、国連安保理も通らなかったのでこの話は頓挫しましたけど。

 いいですか、これ攻撃対象はアサド政権側だったんです。化学兵器でやられた側がISILであり、アルカイダ勢です。アメリカは、当時はISIL・アルカイダ側を支援しようとしたということです。周辺の親米国もそれを支持した。

 シリアのアサド政権、イラクのマリキ政権は、中東の親米勢力の敵。しかしマリキ政権はアメリカ主導で誕生した政権なので、アメリカは擁護するのが当然のはず。いやしかしこれを擁護すれば、アメリカの敵であるはずのイランは喜び、味方であるはずのイスラエルサウジアラビアは怒り出す。

 いやもう、滅茶苦茶なんです中東は。オバマも何をしたらいいのか、どっちにつけばいいのか、もう分からない。私も書いていてよく解らなくなってきた。


 これを言っても仕方がないのですが、そもそもイラク戦争がまずかったのだ、というところに行き着きます。


世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)

世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)


上記、中野剛志氏の著書から抜粋。(昨年9月に出版された本です)

シリア内戦は、中東の覇権を巡るスンニ派とシーア派、あるいはサウジアラビアイラクの代理戦争と化したのである。このため、シリア内戦の影響は、国境を越えて中東・北アフリカ一帯に波及しやすくなってしまった。

(P.152)


 そもそもこの辺の国境線が民族や宗教宗派で区切られたものではなく、それも不安定化の要因。以下の記事だと、信憑性はよくわかりませんがペルシャ湾岸地帯はシーア派に抑えられているようです。


スンニ派 vs. シーア派 - Just Another Day in the Life of KC


 実際にイランとサウジアラビアがぶつかるような事になれば、もうおわかりですね。ペルシャ湾には機雷が浮かび、ホルムズ海峡は封鎖されてしまいます。原油が運び出せなくなる。日本で消費される原油の80%以上がペルシャ湾から、ホルムズ海峡を通ってやってきているのです。一日平均で50万㌧くらいかな?


 中東が安定しないと、日本のエネルギー事情ではやっていけなくなる、ということです。電力に関しては現在、天然ガスや石炭を多用しているようです。安倍首相に限らず、日本の為政者は何が何でも、どんなことがあっても日本国民の為のエネルギー(燃料・食料)を確保しなければならないのです。


 安倍首相が演説したのはイスラエルでしたね。イスラエルといえば打倒アサド側だったのですが。だったら以前は親ISILだったのですけど。もう滅茶苦茶です。そりゃ確かに日本には大したことは出来ないでしょう。お金を出すくらいでしょうけれど。全くもって他人事ではない。日本人は日々、中東からやってくる化石燃料を大量に消費している。なんと一日あたり約6億㍑。


 たかが個人ブログといえど、ですね。政治的意図を伴った発言をされるのでしたら、マクロ的視点は必須です。ただ感情任せに「庶民目線」だということで安倍はバカだのアホだのと「堂々と」書くのは「大衆の反逆」という誤った行為です。それ相応のマナーというものがあるでしょう。


大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)