だから古市はズレている

平壌平常運転

 いやー、読書感想文て難しいですよね。今までの記事でも、書籍や動画の紹介はしても、感想文を書いたこと無かったですね。感想文だけは、どうも昔から苦手でして。っていうか、作文のカテゴリー的にそもそも非常に難しいものだったんですね。いやー、静夏堂さんの仰るとおり。納得です。

モノを書くということ─自発的か否か - 静夏堂

 などと言いながら今回は感想文に初チャレンジ。というかですね、読了できなかった本がありまして。ちょっと私には無理でした。最初から25%くらいまではちゃんと読みましたが。途中でイヤになってしまって。やめようかと思いました。が、これはブログのネタにするのもアリかと思い。やっぱり読むかと思い。でもやっぱり、読んでみるとムカツク。ので結局は、かなり適当に飛ばし読みしました。読んだ文章量は全体の30%以下。でも最後まで一応見た、という。こんな読み方をしたのは初めてですね。で、取り上げてみようと。

「現代の若者代表」

 古市憲寿さん。一般的には左派系論者で若者代表という位置付けでしょうか。ちょっと前の記事ですが、こちら、チェコ好きさんのところでも、違う本の話ですけどイマドキの若者代表、ということで紹介されています。

親より先に死にたい? 後に死にたい? - (チェコ好き)の日記

 チェコ好きさんは古市さんとは歳が近いそうですが、ご自身の感覚とは合わないみたいです。でもまあ、とにかく若者代表だそうなので一目置いている、といった感じでしょうか。私が思うには、マスコミが取りあえず決めてみた「現代の若者像」。なんかいい感じの人材を見つけたので。あくまで表面的なもので、マスコミ側に大した考えはない。本人も自分に求められているものをよく理解している、という印象。

で、今回私が(30%くらい)読んだのはこの本。
 

だから日本はズレている (新潮新書 566)

だから日本はズレている (新潮新書 566)

 
 アマゾンの書評、よくないですね。これ先に見てたら買わなかったのになあ……

内容は

 現代社会が抱える問題の個別各論に、色々とツッコミをしています。そのツッコミどころ自体はまあ、的確なんだろうな、と思いました。細かすぎる気はしましたが。行政・企業・学生と、常に上から目線で、常にバカにした感じで書かれているので、なんか読んでいてすっかりイヤな気分になってしまいました。確かに性格がよろしくない……(笑

 これは完全に書き方の問題。そんなに変なことが書いてあるわけでもないです。書き方がムカツク。私には合わない。まあ、わざとでしょうから、好きな人は好きなんでしょう。痛快に感じる人もいるみたいです。ただ、テクノロジー関連の話で、特に「行政関連は手続きが煩雑で時代遅れだ」という指摘をされいて、そりゃそうなんですが、でもこれには苦言を呈しておきたい。

ソフトウェアの構造

 最新テクノロジーってのは、最近では結構な部分、ソフトウェアに支えられています。ソフトウェアってのは基本手作りです。簡単に動いているように見えても、その裏には膨大な量の、異常系統の処理、リカバリ系統の処理が埋め込まれていたりします。だからプログラムを作成する時、例えば正常に動いている限りでは100ステップしか必要ない、というプログラムでも、その裏には1000も2000もコードが書かれていたりします。ソフトウェアってのはそういう、普段は使われない部分にこそ、もの凄く気を遣わねばならない。そういうところにミスがあっても、正常に動いている限りは使われないコードなので、取りあえずシステムは動いてしまいます。ので、なっかなかミスに気付きづらい。でもそういうミスは許されないのです。
 
 そういうこと解っていて、わざとこういう書き方されているのかもしれませんが。こう、上から目線で「なんでこんな簡単なこともできないの?」と言われてしまうとね。解ってねーなこいつ!なんてイヤな野郎だ!と思ってしまうのは私がソフト屋だからでしょうか。(私はメカトロ系のソフト屋です)

 特に行政の情報管理なんか一切のミスが許されないので、変化に対して慎重になるのは当たり前だろ、アホか!という具合に、腹の立つことばかり。
 
 私の意見など、所詮は現場技術者の甘えだとか言ってしまえばそれまでですけど。ただやっぱり、全体的に、必要な冗長性を軽視し、正常系統の話ばかり、殆どうまくいくことだけ前提にして書いてあるのが非常に気になります(これも単に書き方の問題が大きいですが)。異常系統の話も防御線を張るためでしょう、申し訳程度に一応触れているところがまた心憎い!こんな問題はすぐ解決できるだろと、とにかく軽視している。そこが一番難しいんだって。なんてイヤな野郎だ!

 本書では(多分)出てきませんが、外交安全保障なんかの話でも「有事を想定する必要ないでしょう」という考えのようですし。警察力や軍事力を軽視し、冗長で無駄なもの、とバカにしているフシがある。

 冗長性と無駄の排除。これは現代の社会・経済の最大の問題だと私は思っています。弊ブログタイトルの由来でもある「国土強靭化」も非常に冗長だったりしますので。この件はまた後ほど(次回以降)触れます。

もう一点言わせて

 就活大学生の人気企業ランキングも随分とけなしていました。まあ確かに、40代の私から見ても、え~?思ったり、時代遅れだろ、とか、解ってねーな、とか思ったりの企業が結構入ってますよ。それにあのランキング、親の願望とかも見え隠れしてるでしょ。そりゃあハタチそこそこじゃあ、あんなもんでしょうよ。それを、ブランドやイメージばかりに囚われやがって、アホか?みたいに言われても。しかし「じゃあお前はハタチの子に何を期待しているんだ?」ってツッコミが入ることもキッチリ想定して書かれているので、それもまたムカツク原因。なんてイヤな野郎だ!
 
 ってな感じです。過去に私、たびたび若手のはてなブロガーさんの記事を取り上げたことがあります。大概はオススメとして好意的に取り上げさせて頂いておりますが、2回ほど批判的に書いたことがあります。まあ、あんな感じです。
オレは情強。古臭いことを言う年寄り、読書をしない情弱どもが、バカに見えて仕方がない 感じ。
 古市さんの方は書籍だし、ツッこまれそうなところはきっちり潰しているし。非常に頭良さそう。商売として、意図的にそういうスタイルなのでしょうかね。この人のニーズは確実に存在するということでしょう。
というわけで「意識高い系・若者代表」ということならその通りだな、と思いました。
 
 個別各論のツッコミはたくさんありましたが、基本的には「割と的確なんでしょう。そんなに変なことは書いていません。とにかく書き方がムカツク」という評価。

で、ここからが本題!

 私の認識ではこの人「左派系」の若者代表、です。この人が「左派」だとすると、最大の問題は、提示されている解決案から見えてくる、その根底にある「思想」です。いわゆる「左派」「野党」「リベラル」勢力が、このテの人を「自分たちの側」の若者代表と見ているようで、それは非常にマズイ。

 左派ってのは、マルクス主義が完全崩壊した1990年代以降、迷走しつつも次を模索している、のは解りますが。その答えが「自由革命」と「合理主義」だけでいいんでしょうかね。理想はロシア革命ではなかった。フランス革命だったのだ!その理想を体現している国家はアメリカだ!ってことに、古市さんはなっていますね。それじゃあ結局、ミルトン・フリードマン竹中平蔵先生じゃないですか。安倍政権、バンザーイ!!!
 
 古市さんは現政権も確かに批判していますが、それは個別のテクニックや手段がズレてる、って言っているのであって、根源の思想は全く同じです。よって右派は彼を嫌うなよ!歓迎しろよ!同族嫌悪であることに気付け。
 
 現代の深刻な問題である「格差拡大」「貧困層増加」を悪化させる思想ですよ、これ。何も新しいことなど無い。弱者救済をする気が全く無い、どころか逆。弱者にさらに追い打ちかけるような。右派と左派の根底にある思想が同じじゃあ……いったい民衆はどうすりゃいいの?
右派も左派も「国民同胞の救済に関心がない」のが現代日本の最大の問題。右派は「仮想敵」のことばかり考えているし、左派は「自分」のことばかり考えている。
ちったあ仲間のこと、未来の子孫達のこと、考えろって。
 
 もちろん、右派も左派も古市さんも、具体的に弱者をいじめろ!なんてことは全く言っていませんよ。あくまで根底にある「最先端の思想」が目指しているもの、です。私の話、現時点ではあまり説得力無いでしょうから、今後もやるつもりです。
 
『二一世紀の新しい価値観。「国民国家」の時代は終わり、新しい「個人の時代」が到来したのだ』なんて言ってる人。その最先端の思想って結局 M.フリードマン氏じゃないですか。竹中平蔵氏じゃないですか。解ってます?珍しくも新しくもなんともない。「こんな人達は何百年も前から、いつの時代でも、掃いて捨てるほどいるんですよ。ホント、掃いて捨てたいですよ」なんてことを中野某ホサ官が言っていたような……
 

だから日本はズレている

 だから日本はズレている。古市さんの仰るとおりです。でも私には古市さんも同じ方向にズレているようにしか見えないよ。
 
 
※)考え方が「古いチ」よりも「新論」がオススメ。
(もうホサ官じゃなくなったのでしょうか?)

日本思想史新論―プラグマティズムからナショナリズムへ (ちくま新書)

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