俺たちのポリアンナ

 う~ん。困ったものです。リアルタイムな政治や政治家の話ってあまりしたことがなかったですね。やはり政治の現実には幻滅や失望を感じざるを得ません。今回は、何かと叩かれがちな麻生太郎副総理をフォローしてみようと思っていたのに。前回の「墓穴」記事の翌日に閣議決定された「骨太の方針2014」関連ニュースを見ていたら、すっっっかりやる気をなくしてしまいました。と同時に、この人に対する考え方も、(更に)改めねばならないのか、と暗澹たる気分になりました。まあ、前々から、この人最近すっかりゾンビ化してしまったなあ、とは思っていたのですが。実は十年前、小泉政権の時に既にゾンビ化していたのか、なんて気もしたりしています。

抵抗勢力

 小泉政権時代、「抵抗勢力」として自民党から追い出された亀井静香氏や平沼赳夫氏。対して麻生氏は重要閣僚になっていました。麻生さんも本来は抵抗勢力の側だったのに。しかし、現時点では亀井さんや平沼さんはもう完全に野党の人で、政権運営に対しては全くの無力になってしまっている。となると麻生さんの選択が正しかったのか。自民党内に蔓延る!?良識ある抵抗勢力の方々からは、安倍さんにはしてやられた、突破口は今や麻生さんしかない、麻生さんが「良識派」の最後の砦、という状態になっています。その意味で、この人の仕事は「骨太の方針」を、どこまで「骨抜き」にできるか、だったのですけど。ちょっとした時間稼ぎ程度しかできていないような。安倍ドリルの前に、この人はあまりにも無力です。まあ、実はこの人自身にドリルが突きつけられているんですけどね。

十七条憲法

 自民党の古い政治家には結構ありがちなのですが、この人すごく「十七条憲法」に拘束されている感じがするんですよ。平安時代なら優秀な行政官だったのではないでしょうか。おかげでこの人からは「自然国家日本」としての「規範」の脆弱性や限界、を感じざるを得ません。現代に於いては、食い物にされてしまうものなのかも知れません。この辺の考えは私もまだあまりまとまっていないので、ちゃんと説明できないのですが。十七条憲法など完全無視の小泉さん。更には、積極的にその脆弱性を利用している(ように思える)安倍さんの方が圧倒的に強いのは確かでしょう。
 
参考リンク:十七条の憲法(じゅうしちじょうのけんぽう)-現代語訳付き
  
よって、私としては、現時点では麻生さんに対する判断は保留にします。下手にフォロー記事を書くと、半年後くらいに読み直して「俺、バカなこと書いてんなー」とか思って情けなくなりそうなので。麻生さんは今年で七十四歳か。この人の真価の問われる時が、遠からず来るでしょう。

俺たちの麻生

…………やっぱり、慎重に、少しフォローしておきましょうか。かなりハイリスクな気もしますが……

 まず重要なのはこの人、小泉・安倍政権の重要閣僚でありながら、この両者とは主張している政策が根本的には合っていません。だいたい自身が総理の時や野党時代に「小泉構造改革は間違っていた」「量的金融緩和だけやったって全然意味ない」って小泉政権の政策を批判していましたね。しかし安倍政権は「小泉構造改革」をもっともっと徹底的にやるぞ!ってな話になっています。よって麻生さんは、安倍総理の経済政策は殆どデタラメだと思っています。

 これを正直に「その政策はおかしい」と言ってしまうと閣内不一致でマスコミから袋叩きになることうけあい。だったら総理に従うしかないのか。周辺はおかしなブレインで完全に固められています。「ネオリベラル三面拳」とか「新古典派四天王」とか「詭弁五車星」とか「リフレ六星」とか「レントシーカー七人衆」とか。思いつきで適当に書きましたけど。今のところはそんな感じです。

 というわけでこの人、官邸の方針を否定しないように配慮しながら、抵抗勢力や支持者に対してメッセージを発しようとします。よって、なんだか苦しい言い訳や、どこかしらおかしな話になりがちです。いつでも苦し紛れのレトリックを言わざるを得ない立場です。そこをまた叩かれる。この人の発言を字面通りに取ってツッコミを入れるのは簡単でしょう。
 というわけで、この人についてはツッコミを入れるよりも、どういう意図で、誰にメッセージを発しているのか、本当は何が言いたいのか、について考えてみると、政局が見えてくるかも知れません。
 
 例えば「ナチスの手口を見習え」ってのは改憲派を諫めるためのレトリックで、ある意味イヤミみたいなものでしょう。まあこれは私も失敗だと思いますけど。「TPPでオバマ大統領は国内をまとめられない」ってのは仰るとおりで、オバマは失敗する可能性が高いし、そこに期待するしかない。これはTPPで大幅譲歩してしまったことについての、抵抗勢力や地方支持者に対する言い訳でしょう。或いは、どうせ失敗すんだろ、という、推進派に対するイヤミや負け惜しみの代弁。(いずれのケースも、本人の考える政策がどうなのかはよく解りません。十七条憲法に従っているだけ、のような気もします)

未曾有の危機!

 これは本人が総理大臣だったときの発言なので、別に裏はありません。読み方がおかしい!で、随分といじめられましたね。これは先般書いたこの辺のことを言っています。
 
ケインズが封じ込めたもの - 強靱化のすすめ
歴史は繰り返す - 強靱化のすすめ
 
 麻生さんはこの辺の話、私よりずっと正確に把握しているでしょう。「マクロ経済学」を理解しているケインジアンは、日本の有力政治家では絶滅危惧種です。ちょっと復習します。以下、自記事の引用です。

 派手に外国への資本移動が行われると何が起こるのか、といえば、お約束、バブルの発生とその崩壊です。1929年のNY株大暴落から世界的バブルの崩壊、未曾有の世界恐慌が始まり、この十年後には、第二次世界大戦へと至っていきます。この世界大戦へと至る経緯、というのをごくごく簡単に説明します。

 ①ヒト、モノ、カネの、世界的な移動の自由(グローバリズム) → ②バブルによる好景気 → ③でもあっさり崩壊 → ④大量の不良債権 → ⑤ブロック化経済、保護貿易、利己主義的な近隣窮乏化政策 → ⑥各国が激しく対立 → ⑦地域領土紛争 → ⑧世界大戦

 
これ、もう少し具体敵に書くと、以下のような感じ。
 
 ③~④当時のアメリカ発のバブル崩壊はヨーロッパへと飛び火し、新興国へと広まっていきました。日本も相当なダメージを受けています。⑤~⑥そしてその後日本は、欧米中心のブロック経済から閉め出されます。仕方なく独自のブロック経済を構築しようと、朝鮮半島満州に投資し、強引に開拓を進めますが、⑥~⑦現地ではテロが多発。欧米から非難され、経済制裁を喰らってピンチに陥ります。⑧そして資源確保のためブロック経済圏をさらに拡大しようと「大東亜共栄圏」構想のもとに対米戦争開始。

これが1920~40年代の世界のあらすじ。
 
 ちなみに現代は、③~④ 2007年のNY発のサブプライムバブル崩壊、お約束通りヨーロッパへと飛び火し、大変なことになっています。現在は更に新興国へと波及中。中国はかなりヤバイ状態、他にもマズイ国はたくさんありそうです。⑤ ピンチに陥った欧米は個別FTANAFTA、TTIP、TPPなどのインチキ自由貿易に奔走。アメリカなんか、その実は不良債権処理だとかAIG生命、モルガン証券、GMなど自国企業の救済が主目的ではないかと。⑥~⑦ は今のところクリミア半島、シリア、イラク南シナ海、といったところ。アメリカ、ヨーロッパの狼狽が世界中へ波及しています。
欧米のバブル崩壊後、自国の経済がうまくいかなくなって、そのはけ口を外に求める、というような点で、80年前の日本と現代の中国は似ている気がします。
 
当時麻生さんの言っていた「未曾有の危機」とは、こういう話だったんだと思いますよ。買いかぶりですかねえ。
 

東京オリンピック

 2020年は東京オリンピックですね。さて、じゃあ80年前、1940年のオリンピック開催予定地はどこだったかご存じでしょうか?奇遇にも、麻生太郎氏が生まれた年ですね。当時は第二次世界大戦の影響で開催されず、幻となってしまった東京オリンピック。今度はどうなるのでしょう?私は敵対国のボイコット、くらいで済めば御の字だと思いますよ。


※ 補足記事
fnoithunder.hatenablog.com