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歴史は繰り返す

 前回の「カジノ・キャピタリズム大復活!」あたりからの続きです。
 
 「ロンドンの住民は、ベッドで朝の紅茶をすすりながら、電話で全世界のさまざまな産物を、彼が適当と思う量だけ注文することができた。同じように、彼は自分の富を、世界の天然資源や新事業への投資に好きなように振り向けることができたし、少しも心を煩わせることなく、その果実や利益の分け前にあずかることができた」 *1
 
 上記の文は「電話」で先物や株の取引をしているから、現代に書かれた文章ではないな、というのは解るかと思います。とはいえ、現代の「ネット」だって電話回線には違いないし、電話口から「口頭」で注文していたのが「キーボード」や「マウス」に変わっただけ、とも言えますよね。原文の「電話」のところを「ネット」に置き換えてしまえば、全くもって現代でも通用するし、ある意味たいして変わらない内容、とは思いませんか?じゃあこれ、いったいいつの時代のことなのでしょう?文はこう続きます。
 
「そして何よりも重要なことは、彼がこのような事態を正常で確実で、いっそうの改善に向かうとものとみなし、それからの乖離はすべて、常軌を逸したけしからぬもの、そして回避可能なものとみなしていたということだ」
 
 この「彼」の思惑、「常軌を逸したけしからぬもの」をこの当時、世界は「回避」することができませんでした。そのことを回想しての文章なのです。ここで「回避できなかったけしからぬもの」とは第一次世界大戦です。この原文、いつ書かれたのかといえば、1919年、作者はジョン・メイナード・ケインズ第一次大戦(1914~1918)勃発前を回想してのことですので、1910年代前半のことを書いているのです。なんと、ちょうど100年前ですね。ケインズの活躍した100年前と現代、中身に於いてはなんだかそう違いがないのではないか、という気がしてしまいますね。ちなみに、「無双!中野学校」校長先生の著書「保守とは何だろうか」では、ケインズのさらに百年前のイギリスの話を主に扱っています。フランス革命の余波、ナポレオン戦争産業革命の進展などにより、経済や金融の構造が変化していき、高度化・複雑化する中、当時のエリート、コールリッジ(Samuel Taylor Coleridge)の提案する経済モデル、というのもまた、ケインズの処方箋とそっくりなのです。百年ごとに歴史は繰り返す、のでしょうか。

脱線しますが

 余談になりますが、こういったグローバルな投資っていつ頃から始まったのかはよくは知らないのですけど、例えば大航海時代、十五世紀のコロンブスなんかは既に、必死で投資家を募って資金調達していたようです。グローバルなキャピタリズムの先駆けなのでしょうかね。そういう意味では、上記引用に出てきた「彼」の思惑は、紆余曲折ありながらも、五百年以上前からずっと「いっそうの改善」へと向かっている、と言えるのかも知れません。
 コロンブスと言えば、アメリカ大陸の発見、で有名ですが、中国では「宋」時代、巨大なジャンク船で、十一世紀頃には既にアメリカ大陸に到達していたとか。海洋グローバリズムの先駆けが宋帝国で、ユーラシアの大陸グローバリズムの先駆けがモンゴル帝国、といったところでしょうか。まあ、こちらはキャピタリズムとはあまり関係ないのかな。

もとい

 前回の記事で、1980年頃から始まった新自由主義構造改革により「カジノ型キャピタリズム」が完全復活した、と書きました。これ、当然のお約束として、バブルの発生、崩壊が頻発するようになりました。以前の記事でも書きましたね。

バブル拡大 - 強靱化のすすめ

 1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、そして2007年のサブプライムバブル大崩壊へと至っているわけです。「規範」のない経済とは、そんなものです。ちなみにこの「サブプライムバブル崩壊」の危機、各国の協調によってなんとか乗り切った、みたいに思われている人が多いかも知れませんが、どうでしょうね。アメリカのQE、日本の異次元量的金融緩和に限定した政策など、死にかけのゾンビに輸血を続けるようなものでしょう。まあ、ゾンビって死なないんですけどね。おかげで世界中のあちこちの新興国で、バブルが発生してしまって、不良債権拡大再生産への筋道を作りつつある状態です。ゾンビが世界中に拡散しています。ゾンビが増殖していく様は、まるでゾンビ映画さながらですな。以前にも多分二回ほど書いていますが、次のバブル崩壊の危機は遠からず迫っています。

リアル・ポリティクスは

 しかし、こんな私のような素人のオッサンでも、優れた師匠を見つけて(勝手に)師事し、頑張って勉強すればわかるようなことを、プロの政治家先生方は全然知らないのでしょうか。「保守」と言われる政治家だったら、ビスマルクの言うように「歴史から学ぶ」のが当然なんだし、こんな話は常識だろ!というような人はいないのでしょうか。どうなってんだ?……まあ、非常に少ないようですけど。でも、政権の中核にだって、そんなことは分かっているんだ、という人はいるようです。次回はその辺の話をしてみようと思います。
 
 

無双!中野学校 校長先生の著書

保守とは何だろうか (NHK出版新書 418)

保守とは何だろうか (NHK出版新書 418)

*1:柴山桂太著『静かなる大恐慌』より引用、なのですが、柴山さんも引用で、元はジョン・メイナード・ケインズ、早坂忠訳『ケインズ全集 第二巻 平和の経済的帰結』とのことです。原著を当たれなかったので、引用の引用、とさせて頂きました。