進撃の大衆

 まずはお詫びと訂正です。お気付きの方も多かろうとは思いますが、前回の記事の、「市場の失敗!」の段のところにあった、「自発的失業」→「失業」でした。手元の辞書で調べたところ、

しつぎょう【失業】
それまでついていた職を失うこと。また、働く能力と意志とを持ちながら職につけないこと。(国語大辞典(新装版)©小学館 1988)

とのことで「失業」とは「非自発的失業」を意味します。なにをとち狂ったのか、無意識のうちに真逆のこと書いてました。お詫びして、訂正済みです。ゴメンナサイ……

「リケジョ」の件

 さて、今回は小保方氏の件。政治経済とは関係ないし、興味もなかったので触れる気もなかったのですが、はてなの記事をざっと見てたら、看過できない事になりました。まずはこちらの記事をご覧になって下さい。


みんなが叩く人は自分も叩いていい、と考える人は怖いです - Chikirinの日記


 一般論としては非常に正論と思いました。私が藤井聡教授から(YOUTUBEで)教わった「じっくり学ぼう!政治の哲学」で、哲学者ハンナ・アーレントの、ナチスドイツの全体主義の構造についての哲学的研究、についての解説があります。本件はまさにその全体主義の一例と言えるでしょう。こういった一種の「いじめ」は特に日本人にありがちな「型」の一つなのかも知れません。


 で、ここからが本題なのですが……

 私は、この小保方氏が、実際どの程度叩かれているのか知りません。友人や家族、職場同僚との間では、たいして話題になりませんでしたし、私自身、ニュース記事の見出しくらいしか見ておらず、殆ど内容を読み飛ばしていたので……彼女がマスコミに登場した当初の印象は、なんか「リケジョ」キャラで売り出し中のタレント?くらいの認識でした。

 ので「リケジョ」のテーマで作文はしてみたものの、情報不足なので、やっぱり破棄することにしました。後半に出てきた蓮舫氏のみ取り上げます。先に示した記事でも並列に取り扱っているように、この二つは割と似通った事例と思います。実際に私が書いても似たような話になったので、蓮舫氏だけで十分であろうと判断しました。
 
ところでみなさん、蓮「舫」← この字、是非、コピペせずに変換で出してみて下さい。「ほう」では出ませんでした!

事業仕分け」とは何だろうか

蓮舫氏は、参議院議員の政治家です。上記の記事では政治家は悪くない、官僚が悪い、ってな話になっちゃってますね……官僚が悪い、という根拠も確かに述べられてはいますが……
 しかし、官僚はTV出演など無縁の完全なド素人です。それが全国ネットのTVに引っ張り出されるって、とんでもない話だと思います。そもそも最初から官僚叩きが事業仕分けの趣旨だったと思いますよ私は。

っていうか……事業仕分けって……これ、そもそも政策と言えるのでしょうか?

 最初から「政策」ではなく「ショー」ですよね。政策だとするなら、典型的な「テレポリティクス」政策です。官僚の答弁がTV放映されないのは必要ないからです。そんなショッカーのザコ戦闘員はライダーに蹴り飛ばされる瞬間だけ映せばよいのです。悪を倒す、かっこいい蓮舫氏を映さないと視聴率は取れません。これは「番組」なのです。
最初から一件当たり30秒とかの尺を意識して、TVカメラの配置なんかも計算済み。全体編集してハイライトを中心に5分とか10分にまとめて放映。ここでは蓮舫氏は政治家ではなく役者です。「仮面ライダー」役を演じているだけです。「遠山の金さん」役でもいいですけど。官僚は悪役です。悪の官僚組織デストロンをぶった切る正義の味方、っていう趣旨のヒーロー番組です。さすが元TVタレントの蓮舫氏。お見事でした。


 民主党って「政治主導」と言いつつ素人が出しゃばって、政権発足の当初から官僚を悪者として扱ってましたよね。悪役をやらされる官僚さんもたまったもんではありません。そもそもこんなのは最初から一般公開、TVでやるようなことではありません。

 これは政治主導ではありません。TV主導です。そもそも政権交代がマスコミ主導、TV主導、大衆扇動のための、テレポリティクスそのものなのです。私は、小泉首相に見事に利用され、いいようにやられてしまった「TVマスコミ」、そして小泉に騙された!と気付いた「大衆」が頭に来て、民主党を利用して自民党にやり返した、というのが政権交代の正体だと思っています。だから「民主党」には、政治家よりも「役者」「タレント」が必要だったのです。蓮舫氏はまさにうってつけの人材でした。こんな有様のTVマスコミや大衆が、官僚叩きとか。身の程知らずもいい加減にして欲しい。


 この事業仕分けがTVでウケたもんだからって、視聴率だか支持率だかなんだかを上げようとして、このショーを何度もやりましたね。ああ、馬鹿馬鹿しい。なんともおぞましい話なので、もうやめましょう。思い出したくもない。

 官僚が悪、とか官僚制度が悪ってのは、具体的なようで、実はものすごく抽象的です。典型的な「思考停止キーワード」です。悪の象徴としてTVの前に官僚個々人を引っ張り出すとか、あり得ない。なんの解決にもなりません。本来、官僚さんの仕事は裏方です。官僚個人ではなく、官僚「制度」や「組織」が悪い、と言うならなおさらです。法律や制度、憲法などの問題です。官僚個人に八つ当たりするのは筋違いです。馬鹿げています。

(この「政権交代」や「民主党」についての総括は、「テレポリティクス」だけでは不十分なので、近日中にまた取り上げようと思います)


まとめ

 蓮舫氏個人の問題としては、失言だけ、と思います。個別の発言自体は、大した問題ではなかったと思います。しかし私は、この二つの事例の、主犯団体は、非常に悪質と思います。蓮舫氏、小保方氏ともに、所属する団体に利用された、というのはあるでしょう。人気取りとか予算取りのために。個人としては、お二人ともそれによく気付かずに、ちやほやされ浮かれてはしゃいでしまった、という程度の問題かもしれません。しかるべき理由があって、団体のイメージアップのための広報レディとして、彼女らは担ぎ出されたのです。その辺の認識、ご本人達はどうなんでしょうね。蓮舫氏は承知の上で「遠山の金さん」役をやったのでしょう。ただ、蓮舫氏に比べると、小保方氏は……私には悪質に見えます。ここまでハイリスクな人を立てるとか、組織側もかなりずさんですね。それとも、よほど追い込まれていたのでしょうか。

 確かにいじめは絶対にダメですが。それとは別に、本人や所属団体の誠意や誠実さが問われる問題でしょう。



というわけで、現役官僚さんの著書のご紹介。

官僚の反逆 (幻冬舎新書)

官僚の反逆 (幻冬舎新書)

ふのい(仮)は、経済産業省の飼い犬だ!気をつけろ!

大衆とは何だろうか。

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)

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さて「もやい」を変換すると……