ドイツの戦後レジーム

 前回の続きです。いわゆる「河野談話」に伴う歴史問題について、内政面と外交面の話でした。で、外交については当時の主たる敵国ということで、アメリカを取り上げました。

(前回の記事はこちら → 「河野談話」の釈明 - 強靱化のすすめ


今回はまず、国連の話から

国際連合とは

 そもそも、いわゆる「国連」という組織自体が、戦後レジームそのものである、とも言えるでしょう。

 戦勝各国、いわゆる連合国 [United Nations] は、日本ではなぜか「国際連合」とか言われています。これ、元はと言えば「悪の枢軸」である、ドイツや日本を倒すための組織です。だから少なくとも「第二次大戦」の話をすると、敵国である日本・ドイツは必ず悪者扱い、孤立する仕組みになっています。それが現代の世界的な枠組み、戦後レジームです。
もう70年近くも経とうか、という時期に何を今更、と思われるかも知れません。

 ただ、この体制、今後も維持し続けたい国もあれば、必死にしがみついている国もある。逆に、自らの意志で、これに囚われず、実はさりげなく立ち向かってきた国もあります。

維持したい国がアメリカ・中国、しがみついていたい国が日本、立ち向かってきた国がドイツです。

ドイツは

 第二次大戦の話をすると、日本にとって味方と言えるのは、同じ敗戦国であるドイツなのですが、しかし、いくら同盟国だったとは言え、当時のナチスドイツを擁護して、ドイツだけが悪なのではない、などと言うわけには、どうしてもいきません。ナチスドイツは大日本帝国以上にタブー扱いです。敢えて擁護したところで理解は全く得られない、どころか、ちょっと口にしただけで猛攻撃を受けた、どこかの国の副総理大臣がいました。いくら「違うんだ!」と言っても、ちっとも聞いてもらえないし、「ドイツとは違う!」なんてやたらに強調してしまうと、ドイツに対する裏切りにもなりかねない。個別の戦闘については、冷静な評価や論評も可能でしょうが、こと「戦争犯罪」となると……ドイツは日本以上に分が悪い。


 しかし、現代のドイツは、日本のように「戦後レジーム」に拘束され、身動きできない、なんて状態とは随分と違うようです。いったいなぜでしょうか。ヨーロッパの真ん中で、戦争慣れ、そして負け慣れしているドイツは、日本とは訳が違い、非常に強靭なようです。いつの間にやら、ドイツはEUを事実上牛耳っています。ヒトラーナチスドイツが「第三帝国」ならば、メルケルドイツのユーロ支配は「ドイツ第四帝国」だなんて揶揄されたり。我がドイツの経済は世界一ィィィィィィィィィィ! 
フランスの人類学者、エマニュエル・トッド先生の曰く「我が国のオランド大統領は、まるでドイツの副首相だ」とか。フランスがドイツの言いなりって、ヴィシー政権かよ!


 ドイツには日本みたいな変な憲法もありません。ドイツの周りに「平和を愛する諸国民」なぞいるわけないだろ!そんな奴らの「公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しよう」と決意などできるわけあるか!と、どうやら、最初からそういう考えだったようです。
ドイツでは敗戦後の占領下で「ドイツ連邦共和国基本法」という暫定的な憲法もどきが制定されたのみ。しかもこれ、結局ドイツ主導での策定に成功しています。統一後に新たな憲法を制定する、となっていたそうですが、暫定のまま今日に至っています。ドイツには普通に軍隊もあり、2011年までは徴兵制度もあったそうです。NATOにも加盟、国連平和維持活動へも軍を派遣しています。
さらに、戦略物資である「穀物」。工業先進国であるドイツの「穀物自給率」が100%超を達成している、という話を以前に書きました。


世界大戦の教訓 - 強靱化のすすめ


「ドイツの手口を見習え」ってのはまあ、冗談ですが、色々な紆余曲折はあったにせよ、ドイツという国は、ある意味、非常に先の大戦を反省している、とも言えるのではないでしょうか。それは、謝罪とか賠償とか平和主義、とかいうことではありません。次は絶対に負けない、という意味で。食物自給率100%超、強力な軍隊を持ち、戦勝国の都合で分断されてしまっていた祖国の統一を成し遂げ、欧州中央銀行(ECB)に睨みをきかせ、事実上ユーロのリーダーとして君臨しています。(悪く言えば、牛耳っています)
敗戦直後から既に、次を見据えて敗戦レジームに堪え忍び、着々と諸問題をクリアし、力をつけてきたのがドイツ、なのでしょう。ドイツ、恐るべし。おかげで、なんか別の問題を生み出している件は、また別の機会に。

 善し悪しはともかく、ヨーロッパ情勢は非常にダイナミックです。大戦後は、EU発足から始まり、勢力を徐々に拡大、ソビエト崩壊、その後各地の内戦を経て、EU圏はさらに拡大、そして通貨の統合。この辺、硬直した東アジア情勢とは大きく異なるようです。

いったんまとめ

 1951年に署名されたサンフランシスコ講和条約によって、その翌年に日本は独立を回復しました。この時、日本は連合国から「新憲法の制定」を打診されましたが、当時の吉田茂首相は断ってしまいました。日本国憲法はこの時から「戦後レジーム」に日本を縛り付けるための道具、として機能し始めました。戦後レジームに甘んじ、安住する道を選んだのは当時の政権であり日本人です。それは壊滅状態にあった祖国復興のための、苦渋の決断だったのかも知れません。しかし結局その選択は、現代に大きな禍根を残すこととなりました。

そんな中、安倍首相は2006年に「戦後レジームからの脱却」を掲げました。非常に真っ当で、勇気あることと思います。しかし、あっさり潰されてしまいました。日本の戦後レジームは非常に強力です。


 しかし、ユーラシア大陸のあっち側では、もうかなり戦後レジームは崩壊してしまっています。こっち側では、相変わらず、な感じですが。朝鮮半島は分断されたままだし。この違いは何なのか。


 ……など、色々と調べたりしていたら、正直、勉強不足でちゃんと書ききれない気がしてきました。前回といい今回といい、なんだか冗長になってますね。この話、もっと勉強してから再チャレンジ、の方が良さそうな気がしてきました。というわけで、いずれもっと詳しく書きたいと思います。

大韓民国

 「河野談話」ということで、今回の話題の主役のハズだった大韓民国。しかし私が韓国に興味ないもんだから、扱いがおざなり、になってしまってすみません。さて韓国は、劣悪な労働環境ゆえ、移民を試みる人がたくさんいるようです。アメリカ、日本、オーストラリア等々。祖国が嫌で、脱出したはずの彼ら、いったいなぜ移民先で反日活動なんかやっているのでしょう。あまりにも合理性がありません。
韓国の厳しい状況はこちらが詳しいです。三橋さんとこの、宣伝Youtubeになってしまいますが、韓国が大嫌いだ!という人は是非この話、聞いておいて欲しいです。



日本のマスコミが言わない不都合な真実(三橋貴明氏の情報提供 2013年5月時点 ...


 三橋貴明さん、と言えば、嫌韓の先駆けです。ただ、かつてはなんか、バカにしているようなニュアンスだったように思うのですが、最近は哀れんでいると言うか、なんかむしろ心配している、と言うか。他山の石、として、「明日は我が身」の可能性、今の韓国は日本の行く末を暗示していないか、という懸念をされているようです。

蛇足

 グローバル金融資本の奴隷と化し、劣悪な労働環境に苛(さいな)まれている、にもかかわらず「韓民族は世界一」「日本は悪魔」だとかっていう、ウリナラファンタジー、どう思いますか?
 なんだか「ドイツ民族は世界一」「ユダヤは悪魔」ってのと似てると思いませんか?元はといえば悪政による人心の荒廃、でしょう。そして生け贄を探し出し、ぶっ叩く。恐ろしく単純な解決策へと飛びついていく。日本の嫌韓ヘイトスピーチもどうなのでしょう。「日本はすごい」「韓国は悪魔」って話の信憑性はどうなのでしょうね。

 だから私、ドイツ、日本、韓国の話を書くに当たって、映画作品「ハンナ・アーレント」を是非見ておきたいな、絶対に参考になるはず、と思ったんです。藤井聡先生もオススメだというし。

(詳細はこちら → 映画「ハンナ・アーレント」オフィシャルサイト

去年公開していたから、もうDVDとか出てないかな、と思って探したら、販売もレンタルも無いんです。じゃあ、劇場は、と調べたら先週末(4/5,6)は、なんと山形県鶴岡市だけでした。神奈川から鶴岡まで映画見にいくなんてそりゃ無理だ。最寄りだと、4/12から那須塩原……東京では5/24~になっています。どうするかなあ。

 
 なんにせよ、このユーラシアのあっち側とこっち側の戦後の差異、ソビエト崩壊前後の差異、韓国の反日、アメリカ・中国の覇権崩壊、日本国内の抵抗勢力憲法問題など、戦後レジームの話は色々と題材が多岐にわたりますね。話が拡大して収拾つかなくなりそうです。ので、あまり無理せず、今後もぼちぼちと書いていこうと思います。作戦練り直します。

 とりあえず、韓国の話はちょっと先送りしようかな、と思います。